■SNSで今も見かける、口座の売買・レンタルの誘い
お金を稼ぐことは、まぁ、大変なことだと思います。
おいらはアラフィフも超えていますので、今、大変かと言われると、昔ほどではありません。
ただ、30代や40代の頃には色々とありました。
以前、おいらが構築・設計に携わったシステムをリプレースするプロジェクトがありました。
当時のおいらは同じ部に所属していましたが、別の業務を担当していたので、はたから「これは大変だよなぁ」と他人事のように見ていました。
ところが、聞こえてくるのは良くない話ばかり。
すると、何度も一緒に仕事をしたことがある上司から、
「このプロジェクトに自分も入るから、お前も入れ」
と言われました。
おいらは、おちゃらけた感じで「冗談ですか?」と聞いたのですが、真顔で「冗談を言うか」と返されました(笑)。
そこで自分が担当していた業務については、可能な限り簡略化できる状態に持っていき、それを部長へ説明して承認を得ました。
そしてプロジェクトリーダーとして参加したはずなのですが、しばらくすると先ほどの上司が離れ、なぜかおいらがプロジェクトマネージャーに(泣)。
社内調整やベンダーとの調整、必要に応じて顧客への説明を行い、社内向けの説明資料も作成し、どうにかプロジェクトを完遂しました。
結果として当初想定したシステムリプレースを実現でき、おいらが長年温めていたアイデアも盛り込むことができました。
これは一例で、残念ながら他にも似たような経験をしています。
その対価として会社から給与が支払われ、今は仕事が多少楽になったとしても、それまでの経験なども含めて給与をもらっているのだと思います。
だからこそ、おいらは「LINEで連絡するだけ」「口座を貸すだけ」で数万円を稼げるという話には、まずリスクを感じます。
世の中、そんなに簡単にお金をくれる人はいません。
ところがSNSでは今でも「使っていない銀行口座を買います」「口座を貸すだけで報酬」といった誘いがあります。
特にお金に困っている若い人であれば、軽い気持ちで応じてしまうことがあるかもしれません。
しかし、一時的な数万円のために銀行口座を売ったり貸したりする代償は、あまりにも大きなものです。
今回は、なぜ絶対にやってはいけないのかを整理してみたいと思います。
■口座の売買・レンタルは「簡単な副業」ではなく犯罪
まず大前提として、自分名義の銀行口座だからといって、自由に他人へ売ったり貸したりしてよいわけではありません。
預金通帳やキャッシュカードを売買・譲渡したり、インターネットバンキングの認証情報などを他人へ渡したりする行為は、犯罪収益移転防止法に抵触する可能性があります。
また、最初から他人へ売却・譲渡する目的を隠して口座を開設すれば、詐欺罪に問われる可能性もあります。
犯罪グループが他人名義の口座を欲しがるのには理由があります。
特殊詐欺、SNS型投資・ロマンス詐欺、マネー・ローンダリングなどで得た犯罪収益を移動させるためには、犯罪グループ自身とは直接結びつかない銀行口座が便利だからです。
全国銀行協会も、売買・貸借・譲渡された口座が、こうしたさまざまな犯罪に悪用されていると注意喚起しています。
つまり、「口座を貸してくれれば5万円払います」という人が欲しいのは、あなたの使っていないキャッシュカードではありません。
犯罪に利用できる「あなた名義の銀行口座」が欲しいのです。
しかも2026年7月10日から、犯罪収益移転防止法が改正され、預貯金通帳などの不正譲渡等に対する罰則が大幅に強化されました。
従来の「1年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金」から、現在は「3年以下の拘禁刑または500万円以下の罰金」へ引き上げられています。
さらに、不正な譲渡目的を隠して金融機関から口座を開設した場合には、詐欺罪が成立する可能性もあります。
「貸しただけだから自分は犯罪とは関係ない」という理屈は通用しません。
売る側も、貸す側も罪に問われる可能性があります。
■本当に怖いのは逮捕された後の生活かもしれない
おいらが特に伝えたいのは、刑事罰だけが問題ではないという点です。
不正利用が確認された銀行口座は、金融機関によって利用停止や強制解約などの措置が取られることがあります。
さらに、口座を売ったり貸したりしたことによって、新しい銀行口座を作れなくなる可能性があります。
全国銀行協会も、口座を売った結果として、逮捕だけでなく、新しい口座を作れなくなって就職に支障が出たり、悪用された口座について賠償金を請求されたりする可能性があると警告しています。
さらに2026年には、不正利用口座について預金取扱金融機関の間で情報を共有する枠組みの整備も進んでいます。
「この銀行がダメなら、別の銀行へ行けばいい」と簡単に考えられる時代ではなくなってきています。
現在は口座開設時にマイナンバーを求める銀行も多く、本人確認そのものも厳格化されています。
それでも、金融機関による本人確認や不正利用対策が強化されている以上、「名前を変えれば何とかなる」といった安易な考え方はしない方がいいでしょう。
銀行口座が作れなくなれば、生活への影響は非常に大きくなります。
給与は銀行振込が一般的ですし、電気・ガス・水道などの公共料金、携帯電話料金、ネット通販、各種サブスクリプションなど、現在の生活は銀行口座やキャッシュレス決済があることを前提に作られています。
もちろん現金払いや払込票など別の方法を利用できるサービスもあります。
しかし、銀行口座という当たり前の社会インフラを自由に使えなくなる不便さは想像以上に大きいと思います。
■住宅ローンや就職にも影響する可能性がある
銀行口座を自由に作れなくなった場合、単に買い物が不便になるだけではありません。
住宅ローンや自動車ローンなどの金融サービスにも影響が及ぶ可能性があります。
銀行から住宅ローンを借りる場合、その金融機関の返済用口座を利用することが一般的です。
そもそも金融機関との通常の取引が難しい状態になれば、ローンを利用するうえでも大きな障害になります。
就職についても同じです。
現在、多くの企業では給与を銀行口座へ振り込んでいます。
全国銀行協会も、口座売買によって新規口座を作れなくなり、就職に支障が生じる可能性があることを明確に注意喚起しています。
そして、売った口座が特殊詐欺などに利用されれば、それだけでは終わらない可能性もあります。
犯罪被害者から損害賠償を請求されることも考えられます。
「今月お金がないから5万円欲しい」
そんな軽い気持ちで口座を売った結果、逮捕され、金融機関との取引に支障が出て、さらに損害賠償まで請求される。
数万円を得るために負うリスクとして、あまりにも釣り合いません。
目の前の数万円と引き換えに、その後の人生で使う金融サービスや信用に大きな傷をつける可能性がある。
ここを、お金に困ったときほど忘れてはいけないと思います。
■一時の数万円のために将来を手放さないでほしい
おいらも長く会社員をやっています。
仕事をしていれば、面倒なこともあります。
冒頭に書いたように、「なんで、おいらがこの仕事をやるの?」と思うことも何度もありました(笑)。
それでも仕事をして、その対価として給与を受け取ります。
だから、おいらは「誰でも簡単」「何もしなくても数万円」「LINEするだけ」といった言葉を見ると、そのお金がどこから出てくるのかを考えます。
普通に考えれば、知らない人が何の理由もなく数万円をくれることなどありません。
銀行口座なら、なおさらです。
簡単にお金がもらえるのではなく、それだけのお金を払ってでも犯罪者が欲しがるものを渡していると考えるべきでしょう。
もしSNSで「口座を貸すだけ」「使っていない口座を買います」といった誘いを見かけても、絶対に応じないでください。
そして、すでに相手と連絡を取ってしまったとしても、そこで引き返すことです。
特に10代や20代の若い人は、数万円という金額がとても大きく見えることがあります。
もし周囲にお子さんや若い方がいるのであれば、こんな犯罪があることを一度話してみてもいいと思います。
たった数万円のために、逮捕される可能性を背負い、銀行口座を作ることにも苦労する。
そんな割に合わない話はありません。
「簡単に稼げる」という言葉の裏側には、簡単には取り戻せない代償が隠れていることがあります。
知らなかったために将来の選択肢を狭めてしまう人が、少しでも減ってほしいと思います。