・北村薫『鷺と雪』←文庫化再読
昭和初期、良家のお嬢様・英子とその専属女性運転手・ベッキーさんのシリーズ。
始めて読んだ時は、英子のいかにも良家の子女っぽい素直さと賢さ、そして、自らも認める世間知らずな無垢さと、訳ありげなベッキーさんの才色兼備ぶりと、英子からの提示される謎を自ら答えるのではなく、英子が正解へ辿りつけるよう導いていく感じが面白くてて、時代背景なんかは二の次。
繰り返し読むと、二人のやりとりの合間に見える時代の色の鮮やかさに圧倒される。
「昭和初期」という言葉は、光の当て方で、暗くも華やかにもなり得るけど、どちらにしても日本という国が、日々勢いを持ち、力を蓄えていたという感じがある。
シリーズの完結でもあるこの作品のラストは、読み重ねれば読み重ねるだけ、重みがます気がする。
作中に紹介される山村暮鳥の詩が圧倒的過ぎる。
・諸田玲子『お鳥見女房 巣立ち』←文庫化再読
シリーズ4冊目。
単行本で初めて読んだ時、途中から予感めいたものがあって、半分覚悟しながら読んだけど、やっぱり、泣いたのを思い出した。
「辛い」「悲しい」「淋しい」って、正か負かで分ければ負の感情だけど、でも、プラスに向かえる「負」と、マイナスにしか向かえない「負」がある。
それに、「辛い」も「悲しい」も「淋しい」も、それぞれやっぱり違う感情だな。
とかいうことを考えた。
・井上荒野『ハニーズと八つの秘めごと』
女達の話。
(途中、男達の話もあるんだけど、アレは女達の話だ)
保育園児から初老の女まで様々だけど、まごうことなき「女達」
結構、怖い感じの心理も出てくるんだけど、あんまりベタつかない感じなのは荒野さんの特長かなー
エグくないというか。
荒野さんを好きになったきっかけの「ベーコン」がそんな感じの短編だったけど、この短編集はより一層そういう感じがした。
「ベーコン」よりもさらに熟練な感じ。
女の人は、怖くても、やっぱり、かわいいよ。
自分は女で良かった、って思う。
「ハニーズ」と「犬と椎茸」が特に好きだったな。
・井上荒野『もう二度と食べたくないあまいもの』←再読。
なんて素敵なタイトルw
ホントにタイトルだけで物凄ーく妄想が広がりますが、期待を裏切らない短編集です。
荒野さんも短編が好きだなー。
『静子の日常』みたいな短編連作も好きだったけど。
・『あなたに、大切な香りの記憶はありますか?』
キーコーヒーのWEBサイトで公開されていた「香り」をテーマに8人の作家による競作短編集。
熊谷達也が小説書いてたなんて!←なかなかでした。
「香り」が一番イメージできたのは、重松清さんの「コーヒーもう一杯」
知っている香り、というのもあるだろうけど、ノスタルジックでほろ苦い、けど、悔恨を超えた清々しさまで香ってきた。
角田光代さん「父とガムと彼女」物語としては一番好きだったなー。ミカン味のガムは香りより味を思い出した。
高樹のぶ子さんの「何も起きなかった」は怖い~。同世代女性なのに、なんて「大人」というか「ろうたけた」雰囲気なんだー!と読み終わって叫びました。まいった。
・角田光代『彼女のこんだて帖』←速攻で再読
今回は、あとがきやラストのレシピページも丁寧に読んだ。
多分、私が角田さんの作品を気にするようになった初めの作品集。
それまでもちょこちょこ読んでたけど、良さがあまりわからなかった作家さんだった。
でも、形式(短編とレシピと写真)と写真に惹かれて立ち読みした一話目でやられた。
それから、角田さんの作品は短編や連作を中心に読みあさるようになったんだったなー、というようなことを改めて思い出した。
・東野圭吾『ガリレオの苦悩』←文庫化再読
他はそうでもないのに、薫のキャラだけ柴崎コウが邪魔する・・・。
・あさのあつこ『木練柿』
シリーズ3作目は、短編集。
長編は確かに読み応えあったけど、長編になると体調によっては信次郎のキャラクターが物凄くシンドイので、短編は良いなーと思った。
短編だって、信次郎キャラは、ホントに面倒くさい。(嫌いじゃないとこが更に面倒くさいのよ)
語り手のほとんどが、伊佐治さんだったのも良かったかなー。
同じく伊佐治さんが語り手メインの『弥勒の月』は、各キャラクターの距離が遠くて、あんまり好きになれなかったけど、1作目、2作目の事件を経た3作目は伊佐治が語り手の短編集は凄く自然で良かった。
今回は、おみつさん受難の一冊だったな。
・坂木司『夜の光』←文庫化再読
この作品を読むと、坂木司と辻村深月の違いがよくわかる。
どっちも好き。
小路幸也くらいの歳になったら、どんなお話を書いてくれるんだろう。
三人とも、子どもの苦しさを描いてる。
小路さんは、だから「大人」が「大人たる」ことを描いてる。
坂木さんと辻村さんは、「戦う子ども」を描いてる。
・辻村深月『本日は大安なり』
同じ式場内、同日に行われる4つの結婚式披露宴。
それぞれが思惑を胸に・・・
時系列で語り手を変えながら綴られる4組のカップルと1人のブライダルプランナーの大安吉日な一日。
この手のパニックエンターテイメントは、伊坂さんとか巧いし、恩田陸さんの『ドミノ』も秀逸だった。谷川史子さんも描いてたな。
面白いしどんどん先を読ませるんだけど、途中までなんとなく「辻村深月」色が感じられなくて、不安だった。でも、前半過ぎた頃から俄然勢いが出てきた。おぉ~やっぱ、辻村さんだーみたいな。(^^;)
いやいや、途中、登場人物の一人が言うんですが、
「ややこしいの好き」
ですよ、私も。笑
しかし、この作風の中に、あの人達を紛れ込ませますか?
辻村深月さんの初期からファンには、かなり度肝を抜かれる作品リンクでした。
あー、びっくりした。
あんまりびっくりしたから、普段なら読んでて到底許せそうにない陸雄のことをなんだかなし崩しに許しちゃったよ。苦笑