大殺界は存在しない

 

天中殺ブームがすっかり下火になった1985年、今度は『運命を読む六星占術入門』がベストセラーとなり、六星占術ブーム・宿命大殺界ブームが巻き起こりました。著者は「独自の研究で編み出した占術なの。信じないと地獄に落ちるわよ」と言ったとか言わなかったとか。もう証拠を並べて説明するのがめんどうくさい年ごろの私なので、結論から申し上げます。この占術は、子平八字や算命学その他をブレンドしてアレンジしたものです。

 

01~10 甲子 乙丑 丙寅 丁卯 戊辰 己巳 庚午 辛未 壬申 癸酉 →戌亥空亡 →土星人

11~20 甲戌 乙亥 丙子 丁丑 戊寅 己卯 庚辰 辛巳 壬午 癸未 →申酉空亡 →金星人

21~30 甲申 乙酉 丙戌 丁亥 戊子 己丑 庚寅 辛卯 壬辰 癸巳 →午未空亡 →火星人

31~40 甲午 乙未 丙申 丁酉 戊戌 己亥 庚子 辛丑 壬寅 癸卯 →辰巳空亡→天王星人

41~50 甲辰 乙巳 丙午 丁未 戊申 己酉 庚戌 辛亥 壬子 癸丑 →寅卯空亡 →木星人

51~60 甲寅 乙卯 丙辰 丁巳 戊午 己未 庚申 辛酉 壬戌 癸亥 →子丑空亡 →水星人

      陽+ 陰- 陽+ 陰- 陽+ 陰- 陽+ 陰- 陽+ 陰-

 

このように、生まれた日の干支が1から10までの人は土星人。子・寅・辰・午・申・戌年生まれならプラス、丑・卯・巳・未・酉・亥年生まれならマイナスです。○星人というのは空亡によって決まる仕組みです。

 

続いて六星占術の宿命星と十二運気ですが、こちらも算命学のからくり同様、らしいネーミングを考案して差し替えただけです。算出法は異なるようで、子平とはズレが生じます。

 

子平八字宿命星・・比肩 劫財 食神 傷官 偏財 正財 偏官 正官 偏印 印綬を、

六星占術宿命星・・白照 妙雅 光美 静雲 緑水 大善 風行 大木 火竹 香創に名称変更。

 

子平八字十二運・・長生 沐浴 冠帯 建禄 帝旺 衰  病  死  墓  絶  胎  養を、

六占星術十二運・・立花 健弱 達成 乱気 再会 財成 安定 陰影 停止 減退 種子 緑生に名称変更。このうち健弱が小殺界、乱気が中殺界、陰影と停止と減退が大殺界。

 

大殺界は、「運命のエネルギーが大きくダウンする時期。何をやってもうまくいかないので、体を休ませ、気力や体力を養うタイミング。大きな環境の変化は避けて」とアドバイスしています。「天中殺に事を起こすと必ず破滅になる」「どちらかが天中殺のときに結婚した夫婦は、5年以内に96%が離婚した」に比べたら、大殺界のほうがいくらか穏やかです。しかし3年間もあるのはいただけません。3年もの間、環境を変えるなと言われたら、企業なんかはどうしたらいいのでしょう。経営者が「おれ、今年から大殺界だからさ、3年先まで新規事業はやらねえよ。だっておっかねえもん」。これでは時代に乗り遅れ、ライバル社と差が開くばかりで、まったく話になりません。

 

天中殺は12年のうち2年間(1年のうち2月間)、大殺界は12年のうち3年間あるとされています。それぞれ算出法が異なるので、人によっては両方が重なってめぐることもあれば、5年間連続でめぐることもあるでしょう。もしこういうものの存在を信じてしまったなら、きっと心の片隅に「殺」がへばりついて、悪い事が起こればやっぱりきたか、という心情になります。それが人間の心理です。

 

でも冷静に考えてみてください。1日の中にだって、1時間の中にだって、吉凶禍福は混在していませんか? 2年3年の間には、何かしら良くない事は起こります。起こらないはずがありません。人間は主観の生き物だからです。100%思い通りになんて決してならないのです。一歩外に出れば相手があります。合う人合わない人がいます。大嫌いなアイツと今日ついに絶交したのは、あなたが天中殺や大殺界の中にいるからですか? いいえ。それは自分のせいです。もともと存在しない天中殺や大殺界のせいにしてはいけません。振り回されてはいけません。