紫微斗数の星団中、天機は「南斗第一星」に列している。属陰木、化気は善星。
天機の基本性質は動である。この動は人生の変動ではなく、精神活動の方面に関わることか、仕事を行う頭脳の機敏さを表す。
古人の天機に対する評価は高くなかった。ただ天梁と会合して、さらに左輔・右弼・文昌・文曲を見るときのみ、「文為清顯(文職は高潔で地位と名声が高い)、武為忠良(武職は忠実で正直)」の格局とされた。
この格局以外、天機は先祖から離れて自分で身を興し、他郷を渡り歩く。女命は「雖富貴亦不免淫佚(富貴でも性道徳の乱れを避けられない)」、煞星を見ればさらに「淫賤偏房娼婢之命(妾・娼妓・下女の命)、否則刑夫克子(そうでなければ夫子の運を壊す)」である。まさにこの星曜を何の役にも立たないと説明する。
しかし今日の天機星の評価は、古人とは絶対に違う。原因は古今の社会環境が大きく異なるからだ。古代は正直で真心がこもっていることを重んじ、変化を重視せず、創業の後を受けて事業を守ることを重んじ、改革を重視しなかった。だから臨機応変や振興改革に対して、事務的なものにすすんで頭を使う天機性格は、あまり褒められるものではなかった。
斗数中に「機月同梁」という、天機が寅申二宮守命で太陰・天同・天梁の三曜が会合する格局がある。古訣に「機月同梁作吏人(小役人)」とあり、またこの命局の人は訴状や証書を書くことに精通し、計略にすぐれていることから、小役人に向いているとも言う。
「吏」は「官」に劣り、吏はあくまで官の下で働く人だから、古人の天機に対する評価は、官庁が請け負う工事人の公明正大さに及ばないと認めていた。
今日の社会は、頭が機敏であるほど生きて行きやすくなる。同時に政府で働く人は、小役人身分でも社会的地位が必ずしも低いわけではない。だから今、天機守命の人に対して、かなり高い評価ができる。特に注目すべきは、彼らは頭の働きが速いことにより、いつも時代に即した技術を学ぶことができるので、軽視できない。