そう思っている人は多いと思う。だいたい整体というか手技療法一般は、筋骨格系の症状、言い換えれば肩こりとか腰痛とか頭痛とかそういう症状に有効と考えられているからね。それはどうしてかと言えば筋骨格系の症状の原因は「緊張」だから。筋肉を緩めたり骨格の調整をしたりすることで緊張が緩むと痛みの症状が和らぐ。そういうことよね。

 

でもそれだけではなくて、手技療法を受けた日はよく眠れたという経験はない?そういう方であればマッサージを受けている最中に寝落ちしてしまった経験もきっとあるだろうね。ようは心身の緊張を手技療法は緩和することができるということ。心身を緊張させるのは自律神経のうち交感神経。なので手技療法で筋骨格系の症状が改善したりよく眠れたりするようになるのは自律神経のバランスが整ったから、と説明できる。

 

話を五月病に戻すね。五月病というとちょっとどこかカジュアルな響きがあるんだけれど正式な病名は適応障害。芸能人が活動休止とかしてるニュースでこの病名を耳にしたことありませんか。この中途半端にカジュアルな病名が「ほっといても治りそうな」印象を与えるんだろうね。

 

五月病はいつも書いているように、背側迷走神経系が優位になってすべての活動をシャットダウンした状態。進学や進級、就職なんかで環境が変わってやるべきことが増加したときに、脳が「これはキャパシティを超えたな。過労死しないようにやる気のスイッチを切っておこう」と判断して起きる。

 

背側迷走神経系が優位になるとすべての活動はシャットダウン。具体的には倦怠感や疲労感、感情や表情が乏しくなり下痢や嘔気などの消化器系の不調が現れる。これってそのまま五月病の症状よね。休養は無効なことが多い。というのが背側迷走神経は副交感神経に分類されるから。ご存知の通り活動時は交感神経が優位になり、活動しない時には副交感神経が優位になる。休息したりリラックスした時に優位になるのは副交感神経のうちの腹側迷走神経系。なので五月病で学校や職場に行けない状態も、休養しているときも同じ副交感神経が優位になった状態なのよ。確かに疲労感は訴えるんだけれど疲労と疲労感とは別のものということ。どれだけ休養してみても背側迷走神経系が優位である状態はそのまま継続される。

 

対策は?というと、心身を交感神経優位にもっていけばいいのよ。具体的にはこのままじっとしていたのでは間違いなく死ぬ状況に身を置くこと。かつての戸塚ヨットスクールが無気力な青少年の更生に有効だったのは、行動しなければ間違いなく死ぬ海の上という状況での訓練だったから。大峰山の「西の覗き」という修行も同じようなコンセプトであると思う。でも、ヨットスクールは現在では普通のヨット教室になっているみたいだし、修験道の修行もなかなか大変よね。

 

それでね、さっき書いたように手技療法は心身を副交感神経優位にもっていくことができる。ということは当然交感神経優位にすることも可能なのよ。実はコロナの後遺症と言われているさまざまな自律神経症状も背側迷走神経系が優位になることで起きているらしくてね、意図して交感神経優位に心身を誘導してみると見事にブレインフォグが改善した。ちょっと高等技術ではあるけれどもね。それで今度は不登校の患者さん(オレは定期的に心療内科のクリニックに頭蓋仙骨療法の施術に伺っている)に施術をしてみるとやっぱり奏功してくれた。効果がなかったのは親に言われて志望校以外の学校に入学した、という高校生だけ。

 

五月病と不登校とは発症のタイミングというかきっかけが五月の連休であるかどうかの違いだけで背側迷走神経系による適応障害であることには変わりはない。手技療法で肩こりや頭痛が治るのと、五月病が改善するのは自律神経の調整という観点から見てみるとそんなに変わらないということなのよ。少し時間がかかることもあるけれど通ってくれれば改善する。インチキじゃないよ。