健康保険を取り扱わないウチの整骨院においでの患者さんは、「早く治してほしい」か「時間をかけてメンテナンスしてほしい」かのどちらかの動機でおいでくださる。定期的なメンテナンスとか、よそでは治らない症状、というのも後者に含むよ。

 

整骨院に限らず、健康保険を取り扱うということは患者さんの負担を減らそうというのがコンセプトだと思う。近年の整骨院では健康保険取り扱いを標榜していても、なんやかんやで場合によっては数千円かかることがあるらしい。「なんやかんや」は例えば鍼灸治療や骨盤矯正なんかのオプションをしつこく勧められるからなんだけれど、健康保険を取り扱わないウチよりも高くつくこともある、というのはどう考えても変よね。

 

健康保険を取り扱う際の一部負担金の額は決まっていて、例えば腰を傷めたときにどこの整骨院に行っても保険治療(施術)なら一部負担金(窓口で支払う金額)はおんなじ額のはずなんだけれど実際はそうじゃないのはご存知の通り。健康保険と自費治療との併用はできないんじゃないか、と思うんだけれど、理屈とハナクソはどこにでもくっつくからね。

 

反対にワンコインで施術を受けられる、という触れ込みで「施術体験会」なんてのをやっている治療院もある。もちろん予約が必要で、電話予約をすると「健康保険証をお持ちください」みたいなことを言われるらしい。不思議な世界だと思う、つくづく。

 

それでも、どれほどいじましい手段で集患するにしても、整骨院で柔道整復師は来てくれた患者さんを治そうという意思をもって施術をやっているものとオレは信じたい。そう思っていたの。

 

でもねえ、先日隣り町を歩いていたらすごい看板を見た。「整骨院乗り換え割り」。よその整骨院の診察券を持ってきたらそれと引き換えに割引しますよ、というセクシーなオファー。例えば携帯なんかは日常的に使うもんだからあっちからこっちの会社に乗り換えさせようと考えるのはわかるよ。

 

でも、健康保険を使って整骨院に行くということは日常ではなく非常時よね。何かの原因でケガをしたから整骨院に行くんでしょう?携帯を使うように日常的にケガはしないよね。もちろん日常的に整骨院に通院するということもないはずで、症状が改善すれば通院はしなくなる。整骨院の在り方ではなく、健康保険というのはそういうもんだろうと思うんだけれど違いますか。

 

「整骨院乗り換え割り」という看板は、患者さんの痛みや辛さを治す意思はない、ということが整骨院と患者さんの共同認識として存在しなければ出てこない発想なのよね。毎日何しに通ってるんだ。オレはリラクゼーションを否定しているわけではない。ただ、身銭を切らずにリラクゼーションを受けようとする人にはエネルギーを使いたくないな、オレは。そうしてそれに阿る根性の同業ともかかわりたくはない。もしギョーカイの認識がそうであるならば、整骨院で療養費を取り扱うのはただの無駄遣いでしかない。やめてしまえ。