日本で適法にマッサージの施術を行うことができるのは「あん摩マッサージ指圧師」だけ。(厳密に言えば理学療法士も医師の指示の下でマッサージを行うことはできるけれどちょっと本論からズレるからここではパスね)あん摩マッサージ指圧師の資格を取ろうと思えば専門学校を卒業してから厚生労働大臣の行う国家試験に合格する必要がある。かなり難関の医療職なのよ。

 

それからあん摩マッサージ指圧師は業務を独占している。これはどういうことかというと、免許を持たない人がマッサージ(もちろんあん摩も指圧も同じ)を行うことが法律で禁じられている、ということ。もし無資格でマッサージの施術を行うと罰金刑に処せられる。ちゃんと前科のつくやつね。

 

にもかかわらず、かな。街のあちらこちらでみられる「マッサージ」の看板を掲げているサロンのほとんどにあん摩マッサージ指圧師は在籍していない。よってそこで行われているのはマッサージ以外の行為、または無資格者による違法なマッサージということになる。最近は理髪店で「ヘッドマッサージ」なんてのをメニューに入れていることもあるし、パチンコ屋で「マッサージ師来店」なんて広告を見たこともある。このケースだってあん摩マッサージ指圧師が施術を行うことはないだろうね。

 

それでね、一般の方から見てマッサージと見分けがつきにくい手技療法は「リラクゼーション」という別の職業ということになっている。厚生労働省はもちろんノータッチで通商産業省の職業分類の中に「リラクゼーション業」という名称が使われている。それならマッサージではないリラクゼーションのサロンで「マッサージ」の看板を上げてどうして問題にならないのか、というとね、「あん摩マッサージ指圧師は名称を独占していない」から、というのがその理由。

 

医師免許がないのに患者さんを診察、治療すると医師法違反なのは知っているでしょう?これはあん摩マッサージ指圧師と同じで医師は業務を独占しているから。

 

それだけでなく、医師でないものが「オレは医師だ」と言うとそれだけで医師法違反になるの。これを医師の名称独占という。そうしてね、あん摩マッサージ指圧師は法的に業務は独占しているけれど名称は独占していない。つまりあん摩マッサージ指圧師ではない人間が「自分はあん摩マッサージ指圧師だ」と自称しても「マッサージ」の看板をサロンに掲げても、それだけでは罪に問われないということになる。医師はどうして名称を独占するのか、というと診断とか保健指導とかコトバで行う医行為があるから。あん摩マッサージ指圧師とかはり師、きゅう師とか柔道整復師は診断行為ができない、ということで名称を独占しないんだろうね。

 

あはき柔業界としては業務のほかに名称を法律で独占することがリラクゼーションとのすみ分けのための急務なんだけれど、実はこれはリラクゼーション業にも有益なことなのよ。あん摩マッサージ指圧師の資格のない人が「マッサージ」を標榜して施術を行うと「無資格マッサージ」になってしまうかまたは「マッサージ」の看板を上げているのに実際に施術がリラクゼーションだったのは詐欺だ、と因縁をつけられてもどうしようもない。

 

行政もリラクゼーションのサロンに「マッサージ」の名称を使うな、という指導を行ってはいるらしいけれど実際のところはご存知の通り。あはきは医業だ、なんて寝言を言っている暇があるなら柔道整復も含めて医業類似行為の名称独占を求める声を上げたほうが実際的だと思うんだけれどな。