喜望大地人気メルマガ記事より第1弾
『不渡り=倒産ではありません』 宮内正一コンサルタント
先日クライアントから悲鳴のような連絡がありました。
「宮内さん、回ってきた小切手が落とせない」
「とうとうウチも倒産や~!」
個別の情報は差し控えますが、
不渡り=倒産と勘違いしている方が結構いらっしゃるので、
そのあたりを解説したいと思います。
結論で言えば、1回目の不渡りでは即倒産とはなりません。
※「倒産」という用語には問題がありますが、
ここでは判り易くする為に使います。
1回目の不渡りがでると、手形交換所はそのことを「不渡報告」に掲載し、
加盟銀行に通知します。
私も銀行時代毎日「不渡り報告」を見ていましたが、
「えっ!5年前担当したあの社長不渡りだしたんや…」
なんていう事が何度かありました。
不渡報告に掲載されると、
各銀行は当然要注意人物(企業)としてみなしますので、
様々な不具合…当該振出人の手形割引は拒否される等…が発生しますが、
法律的には、いままで通り当座取引、貸付取引が出来ます。
(実態としては難しい面もありますが)
一度不渡りを出し、
それから6ヵ月以内に2回目の不渡りを出すとこれは大問題です。
いわゆる「銀行取引停止処分」になり、もはや手形小切手は使えません。
それどころか「期限の利益の喪失」状態になり、
銀行は貸出金全額の一括弁済を求める、という事態になります。
更に取引停止処分を受けた者(会社)は、向こう2年間、
銀行と当座取引する事ができなくなります。
この状態に陥ると、多くの経営者は事業継続を諦め、
事実上「倒産」という事態にもなりうる訳です。
という事ですので、一度不渡りを出したからといって、
即座に事業停止に追い込まれる訳ではありません。
当然倒産状態に到る事もありません。
それよりも問題は、不渡りの「噂」により、企業が信用を棄損し、
商取引に悪影響が出る事です。
どこから噂が出るか…本来は銀行に対して出される「不渡報告」の内容を、
守秘義務を持つ銀行員が吹聴する事は無いはずですが、
私の経験上、1度の不渡りでも多くの場合噂が流れています。
ですから、決して倒産ではないものの、やはり不渡りを出す事は、
企業存続にとって大問題となります。
しかし、不渡りには違いないものの、
企業の信用を棄損させない形もあります。
代表的なものが、第2号不渡り。
例えば、契約履行を前提に手形を振り出しましたが、
取引先が契約通りの仕事をしなかった、
契約通りの商品を納めなかったので、
回ってきた手形の支払を拒否するものです。
(その他に、詐欺、紛失、盗難 等もあります)
もし手形小切手が回ってきても、契約不履行があるのであれば、
銀行と相談して第2号不渡りを申し立てるべきです。
但し、この場合、手形額面金額を用意しなければならないのがネックですが。
手形交換所に、手形金額と同額を担保として供託する事
(正式には、「異議申立提供金」と言います)
もうひとつは第0号不渡りです。
最も多い事由は、取立人からの依頼返却ですが、
その他に形式不備・裏書き不備・提示期間経過後・期日未到来等があります。
実は冒頭のクライアントは、
「取りあえず回ってきたものは落とさんとアカン」
という一心で私にTELされましたが、
明らかに第2号不渡り事由に相当する内容でしたので、
当該銀行に第2号を申し立てるべく緊急連絡を入れていただきました。
最後に小切手取引で一つ注意点です。
手形の代わりに、将来の日付を入れた小切手を発行する事をよく見かけます。
通常はその日付で手形交換にかけられますが、
仮に所持人が日付前に銀行に入金、
又は取立を依頼した場合はどうなるでしょうか?
実は銀行は、支払を拒む事ができません。
日付前でも小切手は交換に回って来ます。
これを「一覧払い」といいます。
そんな事を知らない振出人からすれば、
予期せぬ日に資金が必要となる訳です。
先日付小切手は当事者間の信頼が命です。
安易に先日付小切手を発行する事は、
大きなリスクがある事を忘れないようにしましょう。