金武湾レース | 冒険手帳のブログ

金武湾レース


シャロにセッテングを済ませ一息ついていたところへ、
あるチームから「リガーは右側がいいんですか?」と、右は意外だったようで声を掛けられた。
他のチームも左に付けるつもりだったが、急遽右にセッテングし直した。という話を後から聞いた。 

短い時間でうまく説明できるか自信が無かったので、はっきりと「右がいいよ!」と答えた。
もしかしたらレースが終わって、どうして右が良いのか?理解できぬままにしてはアドバイスにならない。 

そこでここでは、当日の海況はどうしてアウトリガーを右にセッテングした方がいいのかを私なりに解説します。
当然ながら私なりの解説なのでこれが正しい!とは限らない。
この内容はそのままサバニ講習生にも解説する内容です。 
帆かけサバニ愛好家で、もし意見が分かれるところがあれば遠慮せず是非聞かせて頂きたい。

セッテングの前、クルーにどちらにセッテングすべきか?私の考えを出す前に聞いてみた。 
いろいろ考えて「左」という答えを出した。 
その理由に納得させるものは無かったので、丁寧に説明して「右」への変更を納得してもらった。 


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海の条件    
風は140度 南東3~4m/s

コース

1、
沿岸に三角のコースを回って、沖合のマーカーに向かう。 
(2度目のターンで宜野座漁港に入ってスイカを取る。)

2、

沖合のマーカーを左に見て宜野座沿岸80度に向かう、これを二周 

3、
はじめの沖合のマーカーを右に見てゴールのビーチに向かう


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                    (画像clickで拡大)



解説

1、
沿岸、三角のコースは短く一度しか回らない。 
コースが反転するのでアウトリガーはどちらに付けても大差はない。
宜野座漁港へのスイカ取りも同じ

3、
向かうべき方向は150度(帰り330度)なのでどちらに付けても条件は同じ、
よって、どちらに付けても結果は変わらない。

2、  
風向は140度。沖合はじめのマーカーから最も長い宜野座漁港沖のマーカーまでは約3Km。
2往復となると12km、全体の9割弱。
内半分の6kmが、進行方位80度をスピードと方位を維持するためには漕ぎをプラスしなければならない。

一方、宜野座漁港近くのマーカーを越えれば追い風となり方位を気にする必要はない。

僅かでも上り角度の場合はいかに進むべきラインから下に行かないかがスピードを維持するためには重要になる。 

つまり、沖合のマーカーから宜野座漁港までの2回の漕ぎが、このコースのアウトリガーをどちらにセッテングするか?を決めるポイントとなる。
最も大変な踏ん張りどころをアウトリガーを引きずって走るか?風上に付けて抵抗を抑えるか?
という考えが「アウトリガーは右」ということなる。
 
帰りはアウトリガーを引きずる事になるがそれによって風下に流されるリスクはない。 
このコースの行きと帰りとでの時間差は圧倒的に違う。
距離だけで考えがちだが、要するだろう時間で戦略を練る。という考えがレースには必要だと思う。 

実際、追い風の場合はアウトリガーを上げても突き刺さっていても、上っている時ほどの大きな差は無い。 

また、帆の位置関係は揚力が必要な場合と必要ない場面がある。
今回の場面がまさにそれに当たる。 

上る時は最も効率的に帆が膨らみ揚力を生むようにセットしなければならない。 
という事は、帆はマストの前にきてアウトリガーは風上側の右という事になる。
 
追い風の場合も、当然ヨットでいうところのスピンネーカーの役目を果たすように膨らんだ方がいいが、
サバニの場合はそのシステムはないし、既存の帆は裏帆になろうが前者ほどのメリットはない。
 
以上が今回のコース「右側アウトリガー」の解説。

今回、サバニの講習を兼ねていたので、帆と舵取りは全て講習生が担当した。 
私は後ろで偉そうにコースの指示をする事になるのだが、何度も何度もコースの修正を指示する。 

私自身が気が短いせいもあって、舵を握った人たちは、さぞやうるさかっただろう。 

「右!」 
「下がらないで!」 
「右!」 
「右だってば、右」 
「多少上ってもいいが下るのだけはやめて!」 

波と風がバウを叩き、風が弱い分どうしても下ろうとする。
慣れなければ当然と言えば当然の事だが、誰に舵取りを交代しても、この繰り返しだった。

向かうべき方向が定まると、どうしても船首をそっちに持っていこうとする。
ラインとラインの延長線を踏むように進むのは理想的だが、船首が進むべき方向に向いていても真っ直ぐに向かっているとは限らない。 

ラインから風下に下る。という事はどういうことか? 
風を帆に伝えられなくなるし、進めば進むほど上り角度が増し更にきつくなる。

最も効率的な進み方は、サバニの能力や風向、潮流など諸条件も影響してくるから一概には言えないが、
今回は目標から10度ほど船首を上に向けてラインをキープする必要があった。 

小学生や私より先輩も数人いる。レースにアレルギーになってもらっては困る。 
なるべくなら楽に走ってもらいたい。そう思えば思うほどコースはシビアになる。 

講習生には上りだけ、なぜあれほどやかましくなったかはこの説明で理解して欲しい。


次に単船による(古式)セッティングに戦略は無いのだろうか?
もちろんある。

アウトリガーと全く同じように帆のセッティングだ。
マストに刺すフーザンナーをどちらに刺すかはそのチームの戦略が見えてくる。 
やはり上りに対して揚力を生むセッティングをすべきだと思う。

そして幾つかの帆を準備して、その海況下に適した帆を選択するのも一つの方法かも知れない。

今回のレースではこのレースに適した帆を装備していたチームは、あくまで私の私見だが見当たらなかった。 
そういう意味においては試してみたい事があり、今後も伸びしろは広がり楽しみだ。

と ダラダラと小難しく書いてはいるが、内容は至って単純な内容だ。


ついでに、、

・スピードはちょっとした事でも、その差は大きく違ってくる。

二隻のサバニで奄美大島に向かった時、初日互いのスピード差は歴然としていたが、 
走りながらその一つ一つをクリアーしていく中で、全く変わらないか時には追い越される場面も出てきた。 
スピードは船の持っているそもそものポテンシャルだけではなく、今備わっている装備だけでもレベルアップできる部分は少なくない。

ティンナーの引き方、追い風の時はもっと逃がして、
帆の位置、マストの向き、荷の位置、体重移動、・・・

こうした事を理解し実践し行く中でスピードは格段に違ってくる。 

今回も座間味のレースでも感じたことだが、チームによっては全く同じ装備でもちょっとした部分を修正するだけでスピードは格段に違ってくるのだろなーと思えるチームが幾つかあった。

帆かけサバニに乗っていた。見た事がある。という人はいるが、手足のように乗りこなしている人はもういない。 
そういう意味において操船技術は一端は途絶えたと思う。

だからと言って悲観する必要はない。
フィールドは最も有能な先生だから、技術習得にはサバニを海に出し一つ一つの疑問を自ら発見していくことも帆かけサバニの面白いところでもある。 

そう言いながらも自信はこの数年殆ど自らのためにサバニには乗っていない。
言葉に説得力を持たせるためにも、もっともっと乗って吸収しなければならない。


最後に、
企画した関係者のみなさん、お疲れさまでした。