★★★★☆

 

 Switchでダウンロードソフトとして発売したミステリAVG『アルタイル号の殺人』についてのレビューです。

 

 あらすじは、木星の衛星カリストにある研究基地「シオン・フロンティア」の爆発から一年。貴重な研究成果の残骸を回収するため派遣された宇宙船「アルタイル号」は、周辺のデブリの中に漂っている冷凍カプセルとそれに寄り添うようにしがみつく少女型アンドロイドを発見する。

 その後、冷凍カプセルに入っていたと思われる未知の生命体が逃げ出し、直後に乗組員が何者かに殺害されてしまう。

 アルタイル号のAIである主人公は、アンドロイド「フレム」を操作し、船内の事件を解決に導こうとするが・・・という話。

 

 途中途中で選択肢や調べる箇所が出てきてプレイヤーはそれらを選びながら進めていくスタイルですが、ゲーム的な操作ができる箇所はあまりなく、ほぼテキストを読んでいるだけの一本道のゲームです。が、シチュエーションやキャラクターも良く、先が気になるストーリーで約千円というお値段を鑑みるとわりと楽しめました。

 宇宙船に謎の生命体が侵入して人が死んでいくという展開はSFミステリとしてはベタ中のベタですけど、やっぱりこういうシチュエーションはワクワクするので個人的には大好物です。

 

 ストーリーを進めていくとしばらくは何も起こらないのですが、第一の殺人が起きた辺りからの緊迫感がいいですね。被害者もわりと主人公的なポジションだろと普通思うような人物がいきなり殺されているので意外性がありました。

 

 殺人自体は全部で二回起こりますが、どの殺人トリックもやや雑というか、「これ本当にそんなうまくいくのか?」的な大雑把さがありました。宇宙環境ならではのトリックが使われているのは良かったですが。あの船内環境で本当にそうなるのかというのを実際に検証してみたくなります。

 

 ひとつ唸った箇所といえば、第一殺人の一枚絵が、初見と真相がわかった後に見た時とでは、印象がまったく180度変わるのはすごくおもしろいなと思いました。ここは本当すごい演出だなと。

 

 ちょっと残念だったのは「触る」コマンドが実質キャラとイチャイチャするためだけのコマンドでしかなかったことかな。せっかくのミステリジャンルなんだから、たとえば脱出ゲームパートみたいなのを設けていろいろ触りながら謎解きできればよかったのに。

 実際は「触る」コマンドが謎解きに関わることはほとんどなくて、キャラに触った時の反応が無駄に何パターンもあるおかげでいちいち数回「触る」コマンドを押さなくてはならないのが面倒でした。スルーしとけばいいんでしょうけど、もしかしたら何かあるのかもしれなかったので。

 

 結末はいちおうハッピーエンドでいい終わり方をしているのでまあまあスッキリなんですが、大事な人が殺されてたり、これから残されたメンバーにもそれなりの苦境が待っているような気がするので万事解決とは言い難いかな。でも、いろいろモヤモヤは残りつつも現状ではこれが最善かもしれませんね。

 エンディングのスタッフロールがあっさりしてたのが少し残念。でも全体的にはわりと楽しめました。