華胥 ★★★★☆

 これ、ジャンル的にはミステリですよね。十二国記でミステリっておもしろいなと思いながら読んでいました。

 才の国は今までちらっと出ているだけで国の内情はあまりわかっていなかったのですが、このような苦難の歴史があったのですね。

 

 責めることは誰でもできるけど、実際に自分がやるとなると難しいというのは本当その通りで、なかなかに考えさせられる内容でした。最後は残された登場人物がみんな心に痛みを抱えつつも、まだ希望はあり再生はできるという終わり方で余韻が残りますね。

 

帰山 ★★★★★

 柳の国で久しぶりの再会を果たした二人の男、風漢と利広。彼らは柳の国の雲行きの怪しさを語り合うが・・・という話。

 

 長く国々の行方を見てきた国政にかかわる二人が国の終わりを語るというシチュエーションがおもしろいです。なかなか怖い話でもありますが。

 

 実はこれまで登場した十二国のうち現状国をまあまあ維持できている中で、私が一番終わりを想像できそうなのが雁なんですよね。本当にこの話で語られているような終わり方しそう。

 雁は延王も延麒もめちゃくちゃ有能だしりっぱな人物だけど、延王が突然王でいることに飽きて国を壊滅させて延麒を失道させて自分も死ぬっていう、そういう未来がなんか見える危うさもあるんですよね。ゼロから興した国をまたゼロに戻すみたいな。

 一応この物語の中ではそういう未来も見越してやんわり否定もされていたけど、ちょっと怖いなーって。

 

 奏はどうかなー。この話で語られていた終わり方もしそうといえばしそうだけど、案外別の終わり方もしそう。

 しかし、自分たちにはもう前例がないというのは想像以上に怖いことだろうな。今がほぼ順調だから余計に。

 雁も奏も好きな国なので、終わりは必ず来るとはいえ、登場人物が笑っているのをずっと見ていたいです。

 

 十二国の中で今一番ミステリアスなのは柳かなぁ。一体どうなっているのだろう。

 いつか柳を舞台にした新作を読んでみたいです。

 

総評 ★★★★★

 十二国シリーズの現在二冊出ている短編集のうちの一冊です。

 どの話も短いのでさくっと読めるし、おもしろいのでおすすめ。

 

 長編ではあまり語られていなかった国の様子もうかがい知ることができるので、ファンの方ならぜひ。