冬栄 ★★★★★

 戴での暮らしをスタートさせた驍宗と泰麒。泰麒はかつてお世話になった廉麟にお礼を言うために漣国を訪れるのだが・・・という話。

 

 なんだろう・・・泰麒が驍宗様に抱っこされて景色を眺めている挿絵を見ると泣けてくる・・・!

 

 これまであまり内情が描かれる機会がなかった漣国の様子がわかる貴重な短編です。

 読んでいてかなりゆるい雰囲気に笑いました。南国のおおらかさってやつでしょうか。漣国おもしろい。

 

 慶の陽子って周囲の理解ない人たちによく「慣例や官をないがしろにしてる」って怒られてるけど、廉王はそれ以上に型破りだと思うわ。(笑) 泰麒だったからまだよかったけど、他国の賓客にあの対応は無礼すぎて笑う。

 いや、めちゃくちゃ良い人だし、人格者だと思いますよ、廉王。キャラクター的にはかなり好き。

 でも、ぶっちゃけあまり王には向いてない人なのかなという危うさを感じますね。あの性格がうまくハマればいいんでしょうけど・・・。廉麟もしとやかな人なので、廉王、廉麟、泰麒のまったりした交流がとてもなごみました。

 

乗月 ★★★★★

 読んでいて感じたんですが、月渓と仲韃って性格がかなり似ていますよね。

 自分の作ったマイルールにやたら厳しくて、それで周囲が困惑しているのにかまわずに自分の中の決め事を押し通そうとするところが。

 もちろん、一方は人望のある侯で一方は討たれた愚王と方向性はまったく違うんですけど、根本的な性格に同じ性質を持つ同士というのが皮肉的だなと思いました。

 

 月渓の心理を丁寧に紐解いていく内容でしたね。祥瓊と月渓、お互いが許されていく物語でした。

 

書簡 ★★★★★

 楽俊と陽子の往復書簡。餌が銀の粒というぜいたくな鳥がかわいい。

 

 王の仕事に追われる陽子と大学で必死に勉学に食らいついていかないといけない楽俊。どちらも本当は苦労が絶えないはずなのに、お互いが「自分はなんとかやれている」と告げる。そして、その "嘘" をお互いがわかっている。

 このなんともいえない二人の信頼関係と気遣いが胸にせまりました。

 

 将来はぜひ官吏として楽俊には陽子のそばにいてほしいと思うのですが、そのあたりまで書かれるか読者の想像に委ねられるのかはお楽しみというところでしょうかね。