高架殺人 ★★★★☆

 勤務を終えて電車で帰宅途中の刑事。車内に乗客は自分ともう一人の男以外にはいない。しかし突然、その男は新聞越しに額を撃ち抜かれて死んだ。電車が疾駆する中、刑事は線路沿いに立つアパートの一室から何かの光が煌めくのを見ていた。死体を駅員に引き渡した刑事はその足でそのアパートへ向かうが・・・という話。

 

 この作品は事件の始まり方がスリリングでたちまち引き込まれました。

 主人公の刑事がちょっと個性的なのもおもしろかったです。その個性が特に事件解決に絡んでくるとかそういうのはなかったですが。

 

 少ないページ数でこの事件を解決できるのかとハラハラしましたが、ちゃんとスピード解決してましたね。

 最後、犯人が咳込んでいるのではなくて実は笑ってたというのがゾッとさせて最高でした。

 

わたしが死んだ夜 ★★★★☆

 表題作ですね。

 夫に内緒で妻と間男が殺害計画を立てていた・・・というのは創作ではよくあるのですが、その流れが一転して間男が殺され、夫と妻が手を組んで犯罪を隠そうとするというストーリー仕立てがおもしろかったです。

 

 作中でも書かれていましたが、善人と悪人は紙一重で、人間はメトロノームのように善性と悪性を行ったり来たりしていて環境や状況によってどちらにも転がってしまうものなんだなということが最後まで表現されていました。

 タイトルの「わたしが死んだ夜」というのは主人公が死んだという意味と、善人であった自分が死んだという意味の二重の意味合いがあるのかな。

 

 間が悪く出会ってしまった同僚がことごとく逃げ道を塞いでくる展開がちょっと笑えました。その後、回復していたらいいですね。

 

リンゴひとつ ★★★★★

 中にダイヤモンドが隠された林檎を巡る騒動。タイトルがいいですね。

 林檎が人から人へと渡っていくにつれ、それぞれの人生が垣間見えていくのがおもしろいです。

 最初はユーモアのある話なのかと思ったら、会社のお金を着服した人とその後の浮浪者のパートが悲しすぎてしばし言葉を失くしましたね。

 会社のお金を着服した人は、てっきり林檎の中のダイヤで事なきを得るのかと思っていたので (もちろんこの人のやったことは悪事ですが) 、そのまま林檎の中身に気づくことなくスーッと自殺してしまうのがすごく怖かったです。その後の浮浪者の救いのなさも相まってめちゃくちゃ気持ちが沈む。その無常さがおもしろさでもあるんだけど。

 最後はユーモア系オチで締めているものの、〇〇〇ネタなのでちょっと好みが分かれそう。