飛ぶ星 ★★★☆☆

 クリスマスにとある一家で行われた道化芝居の最中に、 " 飛ぶ星 " と呼ばれるダイヤモンドが盗まれてしまう。その場に居合わせたブラウン神父は犯人を追うが・・・という話。

 

 芸術家肌の怪盗フランボーの、シチュエーションにこだわる犯罪美学が独特でおもしろいですね。

 これがフランボーの最後の犯罪ということは、あの最後のブラウン神父の説得で改心したということなのでしょうか。だとしたら、この人はだいぶ素直な怪盗さんだなと思う。

 

ペンドラゴン一族の滅亡 ★★★★☆

 フランボーらと共に船旅に出かけたブラウン神父。川の中にそびえ立つ、奇妙な塔のある島に上陸した一行は、そこに暮らすペンドラゴン一族の末裔である船乗りの老人と出会うが・・・という話。

 

 収録作品の一話めで改心した怪盗フランボーが、もう友達としてブラウン神父と仲良く船旅をしている展開の早さにちょっと戸惑う。 ( この本はもともとのブラウン神父の短編集とは並びが違うとは思いますが ) 

 

 古代の呪いとミステリをうまいこと融合させている作品。

 あの人の初登場時のあの行動は伏線だったのね。

 直接手を下すのではなくて、間接的に殺人を起こすそのアイデアが奇抜でおもしろかったですね。スケールの大きさもいい。

 

 ブラウン神父がドジっ子を装いつつファインプレーしているのも、かわいらしくてコミカル。

 

ムーン・クレセントの奇跡 ★★★★☆

 切れ者で知られるワインド氏が密室状態のオフィスから忽然と姿を消し、オフィスのある建物の外で首を吊った状態で発見された。行方不明当時、オフィスの前には商談に訪れていた二人の男らとブラウン神父がいたが、誰もワインドが外出するところや連れ去られるところは見ていなかった。まるで超自然的な力が働いたかのようなその事件の真相とは・・・という話。

 

 下ろしたんじゃなくて上げたんだという逆転の発想はおもしろかったですね。実際のところ、いくら犯人が大柄で相手が小柄だとは言っても、人間をロープで持ち上げるのってなかなか困難だとは思いますけど。

 

 ワインド氏の人となりを説明するためにさらっと作中で語られた三人の浮浪者の話が、後々重大な意味を持ってくるところはすごくおもしろかったです。ズバリ、この物語のおもしろさはここだなと。

 氏の単なる有能エピソードかと思いきや実はそれは氏の心無さを示したもので、相手はとてつもない憎悪を感じていたというところにドキッとしてしまいます。

 それを踏まえたブラウン神父の最後のセリフも皮肉が効いていていいですね。