みどりの星へ ★★★★☆

 緑のものが一切ない赤い惑星でただ一人彷徨う男。彼は地球への帰還を熱望し、故障した宇宙船を修理するためのパーツをもう何年も探し歩いていた。そこへ宇宙パトロールの宇宙船がやって来て、彼は念願の帰還を果たせることになったが・・・という話。

 

 一発めから、なかなか壮絶な切ないお話です。

 つらい現実と希望のある妄想なら、後者の方がまだマシということでしょうか。

 

ぶっそうなやつら ★★★★★

 ぶっそうなやつらってそういう意味か。脳内がぶっそうなやつらでしたね。

 これはいかにもな感じがおもしろかったです。星新一っぽい! ( この本を翻訳しているのが星新一なので、余計それっぽくなっているような気がします )

 

 オチも古典的なショートショート風で笑えます。

 

ノック ★★★☆☆

 宇宙人に標本として囚われてしまった人類最後の男がとった機転で、見事宇宙人を撃退します。

 もともとあるSF怪談話をハッピーエンドなユーモア作品に仕立て上げた話なのかな。

 

シリウス・ゼロ ★★★☆☆

 人類未踏の惑星の最初の発見者だと意気込んで上陸した親子が見たものは、人工的な道路やまるで映画のセットのような表面だけのレストランだった。さらには死んだはずの彼らの知り合いまでもと再会して・・・という話。

 

 謎の惑星が幻覚を見せるというストーリーはけっこうあるんですが、堅物が愛に目覚めるというサブ・ストーリーを絡めてくるのがなんともユーモラスですね。

 あと、油虫っていわゆる、あの〇〇〇〇ですよね? いちおうG注意。

 

さぁ、気ちがいになりなさい ★★★☆☆

 新聞記者が精神病院への潜入取材を命じられ、精神異常者として振舞い精神科医の診察を受けることになった。しかし、彼には三年前以前の記憶がなく、自身をナポレオンだと思い込んでいることを周囲には秘密にしていた。自分は本当に精神異常者なのか、それとも正常なのか。自分自身でも判別がつかぬまま、精神病院に収容された彼だったが・・・という話。

 

 前振り長め。精神病院に入るまでがやたら長いけど、入ってからはわりとポンポンと話が進む。

 オチがだいぶ壮大な話になってくるけど、わりとよくあるといえばよくある展開かも。

 

 以下の作品は既読によりレビュー済みなので省略しました。

 

 おそるべき坊や ( 「悪魔と坊や」 )

 電獣ヴァヴェリ ( 「ヴァヴェリ地球を征服す」 )

 ユーディの原理

 町を求む

 帽子の手品

 不死鳥の手紙

 沈黙と叫び  ( 「叫べ、沈黙よ」 )

 

 総評 ★★★★☆

 タイトルが『さぁ、気ちがいになりなさい』という今のご時世ではアウトな語句を使っているのが、なかなか攻めてますね。ショッキング・ピンクな表紙のカラーと相まってインパクト大です。

 

 既読のものが多すぎて、読むものが五作しかなかったわけですが・・・。

 タイトル通りというか、未読だった今回読むのが初めての作品群に限っていえば、なんらかの "精神エラー" のようなものが題材となった話が多かったですね。狂気、妄想、幻覚など・・・。

 

 今読むとちょっと古さも感じますが、ショートショートとしてのおもしろさは充分にあります。

 訳が星新一さんというのもぜいたくですよね。

 フレドリック・ブラウンの短編ってどこか星新一を思わせるところがあるので、この二人が関わってこの本が世に出ているんだなと思うと感慨深いです。