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 療養のために西インド諸島にあるホテルに滞在中のミス・マープルは、同じく宿泊客のパルグレイヴ少佐の昔語りに付き合わされていた。少佐は自分は殺人犯の写真を持っていると話し、それをミス・マープルに見せようとする。が、彼女の肩越しに誰かを見とめ、急に写真をしまってしまう。翌日、少佐が亡くなったという知らせがホテル内をかけめぐり・・・という話。

 

 他の代表的なミス・マープル作品と比べるとやや地味というか小粒な感じはしますけど、推理するのが楽しい作品でした。

 わりと好きな作品だといえる理由は、今作に登場したラフィール氏の存在が大きいと思います。

 

 今回、事件の舞台はセント・メアリ・ミード村ではなく、ミス・マープルにとっては完全アウェイな南国の観光地。老体の上、深い知り合いもなく、孤立無援なミス・マープルが探偵の相棒として白羽の矢を立てたのが、この彼女以上の老体で介助なしには満足に動くこともできない金持ちの老人ラフィール氏です。

 

 身体の不自由な老富豪といえば、『書斎の死体』に出てくるコンウェイ・ジェファースン氏が思い出されますが、あちらが精力的なイケオジなのに対し、こちらのラフィール氏は骨と皮のいかにもな偏屈ジジイといった風情。口も悪くて常に偉そうなのですが、これが意外と素直だったりするのが魅力。

 最初ツンツンだったのが、ミス・マープルの仲間になって推理を進めていくうちに、デレてくるのがかわいいです。

 最後はもう、ミス・マープルに完全に攻略された感がいいですね。いいお友達できたね!

 このラフィール氏はこの後の『復讐の女神』にもちらっと出てくるようなので楽しみです。