棘の雨 ★★★★★

 雨が突如硬質で鋭い棘に変わり、人々の上に降り注ぐようになった終末世界を描いたストーリー。棘の雨により恋人を失った女性が、その死を恋人の父に知らせるために崩壊した世界を旅する。その末に待ち受けていた真実とは・・・という話。

 

 読んでいるだけでめっちゃ痛そう! 棘の雨が降るという設定がもう終末感半端ないが、それをただ単に超常現象ということで終わらせずに、ちゃんとなぜそうなったのかという説明が用意されているのがいい。その真相に辿りつくまでに幾重にも伏線が貼られているところも、まるでミステリを読んでいるようだ。

 

 ジョー・ヒルのこれまでの作品を読んでいると実感するように、この物語の結末もけしてやさしくない。けれどちゃんと希望が用意されている。

 

 猫好きとしては、棘が刺さった猫を楽にしてあげるところが一番泣けた・・・!

 

総評 ★★★★★

 『20世紀の幽霊たち』のレビューでもご紹介しましたが、ジョー・ヒルはホラー作家スティーブン・キングの息子さんです。

 ジョー・ヒルの作品を知ってから、モダンホラー作家の中では一、二を争うくらい好きな作家になりました。自分の中ではマキャモンとタメをはるくらい。

 正直スティーブン・キングよりも好き。個人的に思うのは、"キングよりは文章がくどくなくて読みやすく、ノスタルジックな雰囲気のある"作家かな。でも、キングっぽさはやっぱりある。『20世紀の幽霊たち』よりこっちの『怪奇日和』の方がよりキングっぽさを感じられるかも。

 

 この本についてですが、『怪奇日和』は原題『strange weather』で、

 「スナップショット」→嵐

 「こめられた弾丸」→森林火災

 「雲島」→雲

 「棘の雨」→雨

 と、天候、異常気象がテーマになっています。そうすると邦題の『怪奇日和』というタイトルはちょっとハズしているかなという感じですが。

 どの作品も読み応えがあって全部おもしろかったですが、「スナップショット」と「棘の雨」が特に良かった。「こめられた弾丸」もなかなかに切れ味鋭い作品だったけど、展開がずっとバッドなままだったのが、何かもうひとつ足りない。「雲島」も他の3作品に比べるとちょっと弱いかな。

 「棘の雨」は終末ものが好きな方には普通にオススメ。ミステリ的な展開も楽しめる。

 やっぱり一番好きなのは「スナップショット」ですね。愛の描かれ方がせつなくてしみる。

 とりあえず、どれも平均水準以上のおもしろさだと思います。