依田義賢は名匠溝口健二と組んで数々の名作を書いてきた脚本界のレジェンドだが左翼思想の持ち主らしい。歌舞伎の人気狂言の映画化の本作は女に裏切られた男の悲劇なのだが依田義賢はそれを吉原という強欲資本主義に潰された地方経営者の悲劇テーマを変えてしまっている。あっしがこの芝居を愛して止まないのは男と女の悲劇だからなのだが。内田吐夢監督は東映女優を信用していないと見えて本作のヒロイン、八ツ橋にも東映女優ではなく水谷良重を抜擢している。あっしはこの役なら丘さとみでも桜町弘子でも良かったと思っているが。主役佐野次郎左衛門は片岡千恵蔵、さすがの好演だ。女中役山東昭子がまだ生きているのが凄い❗