いがみの権太は死んだ中村吉右衛門や中村勘三郎、生きている役者では松本白鸚に尾上菊五郎と立ち役なら誰もが演るが片岡仁左衛門が一枚も二枚も抜けて良いまず片岡仁左衛門の演出が素晴らしい。父親に勘当された極道息子が初めて父親に誉めて貰おうと自分の妻子の命を犠牲にして梶原相手に大博奕を打ち成功して父親を喜ばせようとしたが父親にその想いが伝わらずに殺されてしまう。その演出が涙を誘う。しかも演技が上手いというよりいがみの権太になりきっているのだ。あっしが左平次の文違いを聞いて一番もの足りないのがそこだ。あいつ登場人物になりきっていないんだもん。あっしはどの落語でも人物になりきるのを第一儀にしているから。他の役者もそれぞれ良いが一番誉めたいのが中村壱太郎だ。昼の部のおとくと違ってこの人は娘役が本役なんだね。生き生きと演じているもの。良い芝居を魅せて貰った。