今週の国立映画アーカイブは黒澤明脚本映画特集で本作は黒澤明脚本マキノ雅弘監督という日本映画界最強タッグによる作品だ。本作を初めて見た時に驚いたのはあの重厚な演技の月形龍之介が段平を何とも軽快に演じている事とごうかな殿様演技しか出来ないと思っていた市川右太衛門が旧来の発想しか出来ない無学な段平を冷酷に切り捨てる新国劇の創始者、沢田正二郎を見事に演じている事だ。二人の役者としての実力を思い知らされた。そして後半酒の飲み過ぎで中気になった段平が中気になった国定忠治の殺陣を付けるシーンでは映画的エクスタシーが怒涛のように押し寄せてあっしを泣かせる。もう涙が止まらない。本作はこの後2回リメイクされているが本作が断トツに良いのは月形龍之介と市川右太衛門、二大名優の演技ゆえだ。