明治初めの頃の品川を舞台にした人情物語だ。高峰秀子は評判の美人娘で居酒屋のひとり息子の宇野重吉に惚れているが彼らには西洋に行きたいという夢があり高峰秀子に求愛出来ないでいる。本作を見て思った。山本嘉次郎は相当な落語好きだと。彼が書くセリフはそのまんま落語だしそのセリフを徳川夢声や飯田蝶子が口にすればますます落語になる。つまり昭和20年代から30年代にかけて落語は日本人に寄り添って生きてきたのだ。あっしもそんな時代に生まれ育ったから落語家になったのは必然だし落語家になって本当に良かったと思っている。本作は三遊亭円生師匠の人情話のように胸に染みるドラマでした。