見逃せない新聞記事と記事にならない?マイナンバー制度と個人情報保護法改正案 | 昼は会計、夜は「お会計!」

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この間、うん?と思える報道がいくつかあった。一番大きな問題は、9月3日、マイナンバー(社会保障・税番号)法と個人情報保護法の改正法案が3日、衆院本会議で解決、成立したこと。なぜか、しんぶん赤旗でも他紙でもこのことがあまり報道もしくは大木は取り上げられない。一方、朝日新聞はよく4日の1面、7面、34面にそれぞれ、改正の主な内容、どう変わる、懸念残る、をテーマに詳細に報道していることが大きな特徴となっている。
 マイナンバー法の修正点は、本人の同意があれば銀口座の預金情報と結びつけが可能になる、メタボ健診(16年から)や予防接種(17年から)、番号と結びつけて使える、年金機構の個人情報流出問題との関係でしばらくは年金機構はマイナンバーはしばらくは使えない、というのが主な内容である。
 個人情報保護法は03年に成立して初めての改正なのだが、主な内容は、企業が持つ個人情報について、本人の同意無く使い道をかえられる範囲を広げる、誰の情報かわからなくする(匿名化)すれば、個人情報を同意無く外部に提供できる、様々な省庁にわかれていた監督権限を来年1月につくる第三者機関「個人情報保護委員会」に集約する、差別につながりかねない情報は、同意無く集めたり使ったりできない、ということだ。

この修正の動機付けにもなった年金機構の個人情報漏洩事件について、125万件を超える漏洩という事故に対して、抜本的な原因究明や対策などされていない氏、年金機構の業務をそもそもかなり外部委託するという法律であったり、機構自身が非正規雇用が5割を超えているという状態では、それらのことを解決するには、年金機構を解体して、政府が直接年金管理に責任を持つ構造にしなければいけないが、市場経済原理主義者が内閣及び国会を多く占めてめている今、年金資産の運用も外部委託し、しかも株運用の歯止めをも更にゆるめ(○月○日本欄)などしているので、まして日常の管理運営を国直轄でやるなど考えられない。すると年金機構でのマイナンバーの活用は永遠に無理と判断される。
片方の税でいえば、何かの問答集で出ていたが、個人の確定申告書にマイナンバーを記載するように様式が変わるが、仮にそこに記載が無くても税の申告を拒否できないとの記載があった。であるならば、多くの民間企業で(民主と名がつくところも)かならい前のめりに研究・対応を検討されているところがあるが、社員(職員)が自らの意思で企業側に番号通知をしない場合、企業もその意思を無視して強制的に番号収集することはできないのではないかと思っている(現在、関係者に厳密な解釈を依頼中)。
 
 何しろ、税と社会保障の一体改革から出てきた制度で、「マイナンバー法を『正確な所得捕捉』と『税と社会保障一体改革』のために必要だと説明してきたが、『税と社会保障の一体改革』」の修正合意では税制に関しては、消費税増税だけはどんどん先行させ、所得税・相続税等の累進課税強化は今後の検討課題として 先送りされることにより、『社会保障の充実』と『公平な税制の実現』という目的や理念の骨格自体が揺らいでいる(島根県弁護士会声明)という意味でもそもそもの法案根拠を失っている。まして、ここへきて年金機構の不祥事で「しばらく」は年金機構には使わせないというのでは、法の主旨からいっても半減している。まして、年金機構の不祥事の教訓をさぐっていくと、今度のマイナンバー制度は、年金機構のそれより遙かに大きな規模となる。各企業やそこから委託を受けている業者、あらたにマイナンバー制度とともに委託を受けようとしている業者及びその社員・家族・関係者等膨大な人々が重要な「特定個人情報」を扱うことにある。そこで、マイナンバー制度の監督組織の強化や個人法保護法などでの罰則規定を強めたといっても、それが何ほどの役にも立たない事は容易に推測できる。善意のミスから、悪意の意図的な情報収集まで、事はお金に絡むので、信じられないくらい大規模な情報獲得が進むのでは無いかと思う。一方の、個人情報保護法の改正もまったくひどい話しが、個人情報を匿名化した者は、自由に企業が売買できるということだ。これは今やちまたで大きな問題になりつつある「ビッグデータ」ということで、今でも密かに情報の売買や使い回しをしているらしいということが、もっと大ぴらに大胆にできる。まさに安倍政権のアベノミクスの本領発揮ということだ。心配なのは、この個人情報の匿名化というのが、実に怪しげなのだ。誰のものか解らなくするのに復元不能なマスキングなどが指示されている。膨大な情報の紙データなど誰も不要だが、コンピュータデータでのマスキングくらいならおそらく表向きは復元不可能なマスキングが実はある技術レベルになるとマスキングを解除なんていとも簡単ということになるのは目に見えている。「政府は国会審議で『技術的には100%復元できなくするのは難しい』と答えている(朝日新聞9月4日)。ハッキング技術よりももっと簡単なことだろう。そうするとビッグデータをビッグビジネスすると公言するアベノミクス北の大企業はもちろん、振り込め詐欺からもっと巧妙な詐欺へ発展しつつある裏社会とつながる詐欺集団(大小様々)などが、手ぐすね引いて待ち構えていることだろう。
 預金口座との連結もはじめは本人希望が必要だが、後で義務化が検討されている。医療分野でも当初は、メタボ健診と予防接種だけだが、電子カルテの本格的普及をめざす政権は、今後、健康保険証のデジタル化とともにレセプト情報(患者の受診した内容を請求するデータ)まで対象にすることを検討している。すべてが「ビッグデータ」で何か新薬の開発に役立ったり、難病の治療法が見つかったりと良いことばかりが伝えられているが、実は健康診断結果だけでも、国内外有象無象の生保・損保会社が手ぐすね引いているし、レセプト内容まで対象となれば、確かに膨大な経済効果とともに膨大な個人情報が流出し人権侵害等の規模も予測できる。

 そして見逃せない記事がもう一つ。9月5日付けしんぶん赤旗。4面に衆院厚生労働委員会で共産党・堀内照文儀委員の質問を紹介している。主旨は、日本年金機構の和歌山事務センターから個人情報の入力業務等を受託イズ他共栄データセンター(福井県)が、禁止されている他業者(富山県)への再委託を行い労働者に賃金も払わず一方的に事業停止した問題について、同機構と厚生労働省の責任を追及したという記事だった。しかし、その記事は、年金機構が共栄データセンターに求めている違約金「1500万円弱」について、委託料との相殺通知を出してるが、労働者を泣かせたままで、機構の吐露分だけをしっかり貰おうというのかというものだった。結局、厚生労働省は、労働者の給与支払いを優先すべきだとと認め、年金機構もその通りにすると約束したという。堀内議員は厚生労働省のお膝元で、偽装請負の疑いで、このようなブラックな働き方を許されないと批判。年金機構が外部に委託するという基本的な構想(外部委託を義務つけた基本計画の閣議決定=2008年)こそ見直すべきだと主張したという。年金機構は何の実態もつかめていない。全国、すべての機構事務所を精査すべきだし、そのことこそ主張すべきだ。話を本題に戻すと、このような年金機構は他も同じような独立行政法人は似たり寄ったりという所だろう。

 法律改正案は衆院通過したというが、これ以外に施行規則や省令などまだまだ決めなければならないことがいっぱい有り、新設される個人情報保護委員会も事務局50人でどれほどのことができるかなど言われていて、もう来月からは通知カードが郵送される。そして企業が従業員のマイナンバー集めが始まるわけだが、それは各自治体が世帯単位で送ってくるが、問題は来年1月からの個人番号カードを申請しなければ良い(通知カードに個人番号カードの申請書がついてくる)と考えている。朝日新聞の調査でも個人番号カードの受け取りも希望するが24.3%で希望しないが25.8%であったという。「カードが普及しなければマイナンバーの理解は深まらない。このままでは人工の5%しか普及しなかった『住民基本台帳カード(住基カード)』の二の舞にもなりかねない」(朝日新聞)。

この通りなので、もう既定事実とマイナンバー制度に向けて前のめりのみなさん!このように各個人が個人番号カードを受け取らない(申請しない)で、各企業も個人番号カードを伝えたくない人から無理強いして聞き出そうとしなければ、実質的に有名無実化できる。安保法案は廃案にするしかないが、マイナンバー制度は有名無実化するためには、草の根で、個人番号は受け取らない、企業は番号を集めない、運動を広げよう。そうこうしているうちにきっと感謝されるときが来る。アメリカや韓国などでも大規模な番号流出問題が起きて、使い方の規制や縮小などおきている。そう意味でも、きっと流出しなくてよかったといわれる日が来るに違いない。

以下、朝日新聞(9月4日)切り抜き (どうも上手に切り抜きを添付できなくて印刷しても見えないかも知れません)
解説1
解説2
解説2.5
解説3
解説5