『ウルトラマンエース』第11話~第20話 ざっくり感想
【第11話】
「超獣は10人の女?」(くのいち超獣ユニタング登場)
これで何度目やねんっていう、ヤプールによるTAC基地攻撃作戦。今度のターゲットは北斗で、二人そろわないとエースになれないという変身上の弱点を上手く突いた作戦――と言うことなのだろうけど、イマイチピンと来ないのは、失礼ながら北斗を誘惑する10名の皆様が個人的に魅力的でないというか何と言うか……。むしろ今回は、夕子の健気さが光る一作になっている。というか、今回のTACは夕子以外けっこう情けなくて、「死守せねばならん!」と気合入っている割に、レーダー基地の破壊を二回も許してしまっている。おいおい、それはどうなんだと。それだけユニタングが強いってことなのかなあ。10に分割できる体のパーツそれぞれが超獣であるという設定らしく(ちなみに10人の女性はヤプールに改造された元人間という設定もあるらしい。残酷……)、夜は各パーツの状態で眠るという、可愛いんだかアホなんだか分からない、驚きの画が登場。宇宙の切断貴公子こと我らがエース、マルチギロチンで身体をバラバラにしたは良いものの、ユニタングの分離→合体能力で一気に窮地に立たされる。得意の切断技が利かずに絶体絶命!? かと思われたが、斬っても倒せないなら丸ごと溶かしてしまえという斜め上の発想で勝利。いつもながら容赦のないエース兄さんでした。
【第12話】
「サボテン地獄の赤い花」(さぼてん超獣サボテンダー登場)
前作が男女の関係にスポットを当てた、ちょいオトナなムード? の作風だったからか、今回は気持ちよく子供向け。冒頭からサボテンダーとエースの戦いが展開するサービス精神旺盛な一回でした。決着はつかず、サボテンダーはエネルギーチャージのためにサボテンサイズまで縮小し、サボテン屋の少年のところに上がり込むサボテンダー。このサボテン屋のおやじが良い味出している。正体を隠しながら、鶏小屋の鶏や、用務員のおじさん、通りがかったカップル、おやじの焼き鳥まで捕食するサボテンダー(サブロテン)。そんなに食欲旺盛なのに、匿ってくれた(?)少年とおやじさんには一切手を出さない、義理堅いところも可愛い。正体が判明して、一回はTACに確保されて宇宙空間での爆破処理という憂き目にあったのに、まったく効果なくて地球に飛来。TAC仕事しろ(笑)。けっきょくエースとの死闘が展開される。エネルギー満タンの状態で、序盤こそエースを圧倒し、舌による首絞め攻撃までしてくるが、最後はサーキュラーギロチンの餌食に。エンディングは、「もっと強い超獣が生まれるかも!」とサボテンを50円で完売させる少年と、そんな安い値段で売ってしまったことを怒る親父の追いかけっこ。最後の最後までコミカルで後味の良い話だった。あと、この話は岸田森さん(たぶん)のナレーションが、ちょっとチャーケン風で好き。
【第13話】
「死刑! ウルトラ5兄弟」(ころしや超獣バラバ登場)
まず、ころしや超獣バラバのデザインが最高! 『ウルトラマンZ』でも再登場を果たしたバラバ、とにかく強そうだし、悪そうだし、これぞ超獣!! って感じでカッコいい。しかもヤプールが降らせた放射能の雨によって通常兵器が一切通らない防御力も持っている。本来の強さだけでなく、戦闘環境を有利に持ってきたうえでエースを圧倒するなど、この時期のヤプールの戦い方には見事な戦略があって楽しい。もう一つの目玉となるのは、まさかのウルトラ兄弟全滅展開。ゴルゴダ星に囚われてしまった4兄弟の姿には、当時の子どもたちも唖然としたのではなかろうか。いやそれよりも、一人だけ逃げることを拒むエースを、マン兄さんがいきなりビンタしたことの方が驚きだったろうか。4兄弟の力を借りて単身、死の罠から逃れたエースだけれど、地球でのバラバとの戦いでは、4兄弟を人質に取られて思うように戦えず、ついにバラバの前に倒れる。前回の前後編では、怪獣と超獣と宇宙人の猛攻の前に追いつめられたエースというところで前半終了したけど、今回は完全に敗北。ヤプールの作戦が一度は完全に成功しているわけで、今までにないピンチ! というところで次週~! と言われた子どもたちの気持ち、推して知るべし。しかも何が凄いって、この時点でヤプールはまだ切り札を見せていないってことが次話を見ると分かるようになっている。ウルトラ5兄弟はどうなってしまうのか――後編で続く!!
【第14話】
「銀河に散った5つの星」(異次元超人エースキラー、超人ロボットエースロボット、ころしちゃ超獣バラバ登場)
中盤ボス的な風格のあるエースキラーを、まさかこの1話だけで倒してしまうとは。もっと引っ張るか、前作から継続して登場させても良かったのでは? と思いたくもなるほど、エースキラーは人気のキャラクター。金色の装甲を持つ暗黒騎士みたいで、これがカッコいい。ゴルゴダ星の十字架と言い、このエースキラーのデザインと言い、当時のヤプールは中世西洋文化に傾倒していたのかしら。ストーリーとしては、ちゃんと前作を引きついだものになっており、そこに何とも嫌な感じのする高倉司令官が登場。この司令官が、MATのお偉いさん以上に嫌な感じで、最後はTACから叩き出される。TACの父たる竜隊長との対比が際立つ。モニター画面を通しての変身からゴルゴダ星での再戦、さらにバラバとの決着と、1話の中で相当なボリュームを見せる。エースキラーはエースキラーで、性能テストでエースロボットと闘っているしで、中々に見ごたえがあった。ウルトラ兄弟の力を借りたスペースQでエースキラーを倒して、そこで完! とはならず、地球に戻ってバラバとのリベンジマッチ。ちゃんと前作の戦いとの決着を付けるところが良い。そしてお口直しに、北斗と南、二人の関係が変わるの? 変わらないの? な小ロマンス。エースキラーとの戦いがあっさりしていたのは残念だけど、中盤近くの大エピソードとして、ウルトラマンエースを代表する話に仕上がっていたと思う。
【第15話】
「黒い蟹の呪い」(大蟹超獣キングクラブ登場)
シリアスな13話・14話との差別化を図ってか、12話的な子ども中心の話に仕上がった第15話。父を海で失った少年と、父の化身? 魂が乗り移ったカブトガニの「大蟹」さんとの交流。巻貝を耳に当てて大蟹を声を聞くという、何ともノスタルジックな雰囲気で、夕焼け空の下で海を眺める少年たちが不思議と画になる。今回は今野隊員の休暇回でもあって、瀬戸内海に面した小さな漁村で起こる事件という、小品感も少年たちのドラマによく合っている。ただ、超獣キングクラブ自体の火力は中々なもので、ウルトラマンエースが消化フォッグで火を消し止めなければならなかったほど。ミニチュアセットも気合が入っていて、漁村だけじゃなくで、コンビナート群や遊園地など、けっこう場面が忙しく変わる上に、細かいところまで作りこまれている。そこで展開するエースとの死闘。今回はTACも最後まで活躍する。ストーリー的にはツッコミどころが多い回であり、まずエースとキングクラブが相撲を取る伏線が皆無(今野隊員と絡めて何か伏線を入れられなかったものか)だし、大蟹の口から「元凶はヤプールじゃ!」とか言われると、何か雰囲気が崩れる(見終わるまではこの大蟹が黒幕だと思っていた)。最後の最後には、本人たちの了承なしにトンデモない正体ばれをぶっこんで来る。さすがにおいおい……と。こういう牧歌的なところも含めて、「夏の怪奇」というよりは「真夏の夜の夢」的な感じの強い作品だった。
【第16話】
「夏の怪奇シリーズ 怪談・牛神男」(牛神超獣カウラ登場)
夏の怪奇シリーズと銘打っていて、いかにも日本怪談風のおどろどおどろしいタイトル。でも実際は岡山とのタイアップ? で、全体的に明るいテイスト。吉村隊員の実家の化粧品(オリーブマノン?)がやたらと前押しされている辺り、企業の後押しを感じてしまう。鼻ぐり塚の鼻繰りを盗んだ男が、ヤプールに牛の怨念をかけられて変身するって、ヤプールは前回の「海を汚した恨み」とか、いかにも日本風な怨念文化によくお詳しいこと……。脚本の石堂淑朗さんのアニミズム的世界観前押の怪作で、意外とこの世界観とエースのビジュアルがしっくり来る。カウラはまんま牛御前って感じで、のべっとした顔が特徴だけれど、これがまた中々強い。そしてまたまた市街地破壊で楽しませてくれる。合成的には嘘っぽいけど、ガラスを隔ててビルの向こうからカウラがやってくる画など、色んな工夫にチャレンジしているところにも好感が持てた。好感と言えば、吉村隊員に半ば強引にくっ付いて行ったヒッピー風の彼。最後まで憎めないキャラで好き(笑)この彼が次第にウシ化していく辺りのおどろおどろしさが、夏の怪奇テイストならではかな。ただ、ヤプール扮する謎のお坊さんがジャンプするたびにバネみたいなボヨンって音がするとか、まだどこかコミカル。真のビビらせは、この後にやってくる……。
【第17話】
「夏の怪奇シリーズ 怪談・ほたるヶ原の鬼女」(大蛍超獣ホタルンガ登場)
夏の怪奇シリーズの中でもトップクラスに不気味な一作で、ぶっちぎりにお気に入りな一作。和風怪奇テイストを打ち出しつつも、今回のヤプールー超獣の目的が、TACの新兵器の輸送阻止にあり、舞台としてほたるヶ原、ヤプールの人心掌握として母を交通事故で失い、車を恨む少女を利用する、と、ここまでの展開がとっても奇麗で、ストーリーの肝心部分に、ちゃんと舞台が機能している。冒頭、鬼女の姿を見て事故を起こすカップルのシーンはかなり怖く、特にナレーションに併せて登場する髑髏が超怖い。今回は中々ありそうでなかった南隊員のフィーチャー回で、元ナースならではの南隊員と少女との交流が描かれる。この辺は優しく可憐な南隊員のキャラならでは。――けど! 歩けるんじゃないか疑惑があるからって、坂道っぽいところで車いすを押して手を離しちゃいけません(笑)。怪奇や超獣との遭遇は基本的に真夜中で、怖さに拍車がかかる。ホタルンガも真夜中に映える美しい超獣で、動物モチーフの超獣の中では強者感があって好き。規模は小さいながらバイパス横の家並みとかも作ってあって、画が単調にならないようにしているし、久しぶりにTACが新兵器でエースのサポートをする。TACの援護に気づいたエースが超獣から離れた瞬間にV7発射! そこにダメ押しのメタリウム光線!! と、戦いのテンポが良いのも本作の魅力。闇夜に派手な爆発が二方向から出るのが最高。最後はお口直しで、歩けるようになった少女と夕子の仲睦まじい姿で終わる。ウルトラシリーズの「怪奇シリーズ」においても特に完成度が高く、幾度となく見直してしまう力作。
【第18話】
「鳩を返せ!」(大鳩超獣ブラックピジョン登場)
ヤプールの悪辣さがわかる一作。ただ、今回はヤプールも計算外だったらしく、珍しく慌てるヤプールが見られる。無人観測機の回収に鳩の帰巣本能を利用する計画を逆手に取り、実験に使う鳩(小次郎)の脳を超獣ブラックピジョンに移植、TACの基地を襲わせるはずが、三郎少年の鳩笛に反応して勝手に出て行ってしまう。コミカルな要素も入りながら、鳩の小次郎がブラックピジョンに改造される画は中々にショッキングだし、ブラックピジョンそのもののデザインも、着ぐるみの粗雑さが良い感じに働いてか非常に痛々しく見えた。それでいて、強いのなんのって。お台場晴海埠頭を舞台の激戦で、ウルトラシリーズでもたまに見られる、スケールの広い海岸端での戦いが嬉しい。ブラックピジョンが終始エースを圧倒しており、メタリウム光線の直撃を吸収して跳ね返すので、エースは決定打を打てずにピンチに追い込まれていた。その窮地を救ったのが、三郎少年の鳩笛と言うところが悲しい。考えてみれば、鳩の小次郎は始めから終わりまで三郎少年の鳩笛の音を頼りに、飼い主に会いたい一心で現れ出たようなもので、その鳩笛に引導を渡されることになるとは……。ラスト、横たわる三郎に歩み寄る主観ショットも物悲しい。次の話で約束ってのは必ず守らんといかん! といていた北斗だけど、三郎少年との約束は果たせずじまい……。エースの中でも、特に後味の悪い、ゆえに記憶に残る一作となっている。
【第19話】
「河童屋敷の謎」(河童超獣キングカッパー登場)
ウルトラシリーズに登場する嘘つき小僧は大体同じ目に遭う(笑)。キングカッパー大作戦って何よとか、子どものへそをとる作戦って本当に何よとか、色々と突っ込みたくなるところはあるけれど、どうですかね。超獣のビジュアルと設定から一発勝負かけたって感じなのかな。だって、頭の上にプールって、いくら何でも変ですからね。こんな変な本作にも見どころはあって、まず話の大筋が、「自分の信念の最後まで貫き通す」という至極真っ当なものであるということ、そして夏の怪奇シリーズ顔負けの、超怖いシーンがあるということ。へそを取られてえらいことになってしまう子どもたちと、「きたわねーまっていたわよー」のアンドロイド二人は本当に怖い。下手したら、ほたるヶ原の鬼女以上。プールで泳ぐとへそを取られるという、さすがに変てこりんな話に、さすがの北斗でさえも疑いの目を隠せず、TACの山中隊員からは「子どもの嘘なんかに騙されて出向くからTACが信用されないんだ」と散々な言われよう。相変わらず、この人は当たりが強い……。最終的には出向くことになるけど、北斗のみならず夕子まで竜隊長の制止を振り切って飛び出した。「キングカッパー大作戦」の最終的な帰結は、北斗がターゲットだったみたいで、何とも回りくどい。どっかのジュラル星人と良い酒が飲めそうだわ、ヤプールって。特撮に関しては、キングカッパーが地面から出現する画が良かった。あと、水をふんだんに使ったからか、エースの赤い塗料が落ちて、血まみれになっているように見えました。
【第20話】
「青春の星 二人の星」(大蝉超獣ゼミストラ―登場)
ゼミストラ―登場っていうよりも、篠田三郎さん登場! の回。ZATに落ち着く前の東光太郎みたいな青年で、基本的には北斗とこの篠田一郎(役名)二人のやりとりでドラマが進行する。学生運動に失望して、鎖に繋がれたスカンジナビア号が動く瞬間に全てをかける青年という、時代を感じるキャラクター設定。年齢的にも近い二人のやり取りが今までになく斬新で、セリフで語られる以上の多くの背景を感じさせるところが良い。北斗がスカンジナビア号の運命に己を重ね合わせて考えるとか、そこを掘り下げればそれはそれで面白い話が書けたかも。この二人の物語がど真ん中に居座っているので、超獣関係はとにかく薄い。ゼミストラ―も、これまでになく薄味の超獣で、せっかくの篠田三郎登場回なのに、エースの超獣の中でも魅力に乏しい。あとヤプールがスカンジナビア号を浮かばせていた理由もよく分からんし……。最後、状況は待っていても変わらず、自分から変えていかねばならないと心を変えて船を下りる篠田一郎と北斗の会話が渋い。ウルトラシリーズでここまで純直な青春モノって、今までなかったような気がするが、それは北斗のキャラクターによるところが大きいのかも知れない。篠田一郎はこの後、実は大学には戻っていなくて、ボクシングに目覚めて世界中を転々としていた……なんてことになれば、次のシリーズに繋がっていく重要な一作にもなったかも知れないのに。