ゴジラ７０周年を記念して、TOHOシネマズで厳選されたゴジラ作品の再上映が実現。
７月のトップバッターは、やっぱりこれ！ ということで、１９５４年版の『ゴジラ』が銀幕に戻ってきた。
こちら、劇場で売っていた当時パンフレットの復刻版でございます。
１９５４年版の『ゴジラ』については以前、ゴジラシリーズざっくり感想でやりました。僕にとっては日本映画永遠の金字塔。洋画のオールタイムベストが『ジュラシック・パーク』なら、邦画の永遠のベストはこの１９５４年版『ゴジラ』です。この二作については、「いつか映画館で観たい！」が長らくの夢でした。『ジュラシック・パーク』は昨年の「午前１０時の映画祭」にて夢が叶い、『ゴジラ』は今回の７０周年記念上映で夢が叶った。
僕にとって、『ゴジラ』は一番回数観てきた日本映画です。事あるごとに見返しているし、宝田明さんがご逝去された際にも追悼の気持ちを以て見返しました。しかしいずれも、家のテレビでＤＶＤやアマプラでの再生であって、劇場で『ゴジラ』を見る機会には中々恵まれなかった。
今となっては見返しまくった『ゴジラ』は、何度見ても面白いけれど、家で観る分には新鮮さはありません。展開は分かり切っているし、セリフの流れも大体分かるし、寝不足の時に見ると、ゴジラの足音が心地よくてウトウトすることもある。それくらい、「分かり切った」作品だったんですが――
劇場で見ると、これがまた印象全然違った。
知り尽くしているはずの『ゴジラ』が、すっごく新鮮に見えました。
まず、音。冒頭のゴジラの鳴き声が全てを持って行く。びりびりくるようなゴジラの咆哮は、ー１．０でもＸコングでも体感できたけど、初代ゴジラの粗削りな咆哮は別格。これがタイトルの部分だけでも絶え間なく聴けて、早くも耳が幸せ状態。
さらには音楽。大音量で聞けるゴジラ音楽が、こんなに耳を震わせるとは。もちろんお馴染みのテーマが聴ける喜びもあるんだけど、今回の劇場で一番心に残ったのが、サウンドトラックで言う「栄光丸の沈没」や「嵐の大戸島」「品川大混乱」に共通するメロディーで、これが緊迫感を煽る煽る。家で観ている時だって集中しているはずなのに、映画館ではやっぱり没入感が段違いなんでしょうね。感覚の全てを目の前の映画作品に向けているからか、全ての音が臨場感を以て響いてくる。
大スクリーンで観るゴジラも良かったなあ。特に東京上陸のゴジラの巨大感が最高。これはやっぱり映画館で観る価値がある。一番の注目ポイントは、画面が大きくなったことで如実に分かるゴジラの「質感」。ゴジラが東京を襲撃するシーンは基本的に夜だから、ゴジラの姿も夜にまぎれて見えにくい部分がある。これを大きなスクリーンで見ると、僅かな光に照られた部分でゴジラの質感がより明瞭に見える。さらには、カットによって微妙なニュアンスの違いを見せるなど、とにかくゴジラが画面に登場するカットについては目が離せない。時に、「これは！」っていうゴジラの「画」を見つけられる瞬間がある。まあ家で観ても見つけられるかもしれませんが、それが劇場の巨大スクリーンに登場する時の「おおっ！」という興奮は、やっぱり他の何にも代えがたいものだと思う。
劇場で観る醍醐味のもう一つは、当時の東宝映画を支えた名優たちの演技。志村喬や平田昭彦の名演、その中でも心の動きなど微妙なニュアンスを声や些細な表情であらわす、それがよりはっきり見て取れるようになっている。他にもたとえば村上冬樹演じる田辺博士が、志村喬の後ですっごく良い顔を見せている、日本映画俳優、特に昭和映画の俳優の魅力は顔にあり！ 自分が中心になっていないカットやシーンでも、名バイプレーヤーの見事な演技アンサンブルが堪能できて、ゴジラが登場しないシーンであっても目が離せないし、知ってるはずのシーンでも、新しい発見があって、本当に楽しかった。
以上、『ゴジラ』を初めて劇場で観たことに対するざっくり感想でした。すごく満足です。これで１３００円はありがたいよ。何遍も観た作品であっても、視聴環境が変わるだけで、こんなに印象が変わるのかと驚きました。しかも何が嬉しいって、僕が言ったTOHOシネマでは、プレミアムシアターで上映してくれてるんですよね。とっても贅沢な環境で鑑賞出来て、もう言うことなしです。仕事の関係で何度も繰り返しみるところまでは行けないかも知れませんが、もう一回くらいは鑑賞したい。この７０周年を逃すと、また中々機会がないと思う。この上ない幸運、かつ貴重な記念上映です。
日本映画の頂点――劇場で観る『ゴジラ』。最高の映画体験でした！