ざっくり感想「ウルトラセブン」第21話~第30話 | 怪獣玩具に魅せられて

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  『ウルトラセブン』第21話~第30話まで ざっくり感想

【第21話】

「海底基地を追え」(宇宙海底人ミミー星人・軍艦ロボットアイアンロックス登場)

 戦艦大和を含めた沈没船を「資源」と称し、侵略ロボットに作り変えるとは、ミミー星人、中々賢い。個人的には、このアイアンロックスが「ノンマルトの使者」に登場した方が、より物語のテーマに言及したキャラクターになったと思っているけど、まあないものねだりは意味がない。今回は日本近海で相次ぐ沈没事故に対してウルトラ警備隊が調査に乗り出すところからスタートしていて、キリヤマ隊長の指揮の元、陸海空にそれぞれ隊員たちが配置される。この辺の手際よさが、ウルトラ警備隊の持ち味か。アイアンロックスが数分後に大爆発すると聞いて、打つ手なく見守るしかない隊長の後に時計がかかるなど、緊迫感の演出も堂に入っている。一方、セブンとアイアンロックスの戦いは暗くてあまりよく見えず、これと言った決め手に欠けるのが残念だったところ。

 

 

【第22話】

「人間牧場」(宇宙怪人ブラコ星人)

 個人的にはけっこう好きな、不気味回。まず、ブラコ星人の造形がキモちゃんで好き。そいつが胞子を人間の女性に植え付けて培養させるなど、グロテスクな「人間牧場」という設定が非常に良い。人間の身体を資源として求めてやってくるのは、ワイルド星人以来だけど、より限定的かつ肉体的に迫るものがあって、通り魔的な恐怖もこっちの方が上。胞子が膨れ上がるシーンとか、本当に気持ち悪い。色調がシーンによって変わるのもこの話の大きな特徴か。肝心の戦闘は、ウルトラホーク1号VS大宇宙船団が主で、セブンはさっさと土星に行ってしまう。そこが物足りなくはあったけど、「人間牧場」というネーミングに全部持っていかれ、その際立った異色性が独自の魅力につながっている快作だと思う。

 

 

【第23話】

「明日を捜せ」(宇宙ゲリラシャドー星人・猛毒怪獣ガブラ登場)

 キリヤマ隊長主人公回で、信じる者に対して誠実であろうとする隊長のキャラクターにグッと来るストーリー。シャドー星人の顔が怖い上に、執拗に追ってくるので結構なホラー回でもある。が、宇宙人、占い師のヤスイともにコミカルなキャラ立ち著しいので、後半になればなるほどそういった部分でも面白味が出てくる。怪獣との戦いは久しぶりな上、けっこうな強敵のガブラ。ウルトラセブンの中ではマイナーな部類に入るけれど、見かけによらない躍動感やいかにも凶暴そうな顔つきがけっこう好きな怪獣。アイスラッガーで首をすぱんとやられるシーンが特に良い。タイトルとなっている「明日を捜せ」で、キリヤマとダンの関係を情篤く描くなど、ウルトラ警備隊の人間関係を深堀する、意欲的な回であったと思う。

 

 

【第24話】

「北へ還れ!」(オーロラ星人カナン星人登場)

 この「北へ還れ!」という言葉は、フルハシ隊員に向けられたものと解して良いのだろうか。まさか、お母ちゃんに「北へ還れ!」とは言わないよね。セブンの中でも特筆した人情噺で、ウルトラ警備隊の家族関係で、ここまで個人に言及したのは今回が初めて。ストーリーはそういった人情噺の王道を行くもので、北海道にフルハシ隊員を連れ帰りに来た母親が、息子の活躍を見て応援する気持ちを持つという、まあ良くある筋なんだけど、これをフルハシ親子でやられると、グッと来るものがある。無線でのやり取りなど、感動的。一方、今回は怪獣が出せずに、電子頭脳を操られたウインダムが相手。このウインダム相手に終始「しょうがねえなあ……」のスタンスで挑むセブンに爆笑。史上最もやる気のないエメリウム光線も、ここで見れます。ハードなSFと思われがちのセブンだけど、合間合間、というより中盤にけっこうな分量、こうした人と人との関係の物語を入れてくる辺り、また違った一面が垣間見えて興味深い。

 

 

【第25話】

「零下140度の対決」(ミニ宇宙人ポール星人・凍結怪獣ガンダー登場)

 今回はウルトラ警備隊最大の危機。セブンもそうとうヤバかったけど、ウルトラ警備隊も一時は基地を捨てて退避することを余儀なくされるほど追いつめられていた。彼らをそこまで苦しめたのは「寒さ」。下手な小細工を打って基地内で破壊工作をするのではなく、ただただ滅茶苦茶寒くした上で原子炉を攻撃し、電気系統を止めてしまうという、ポール星人とガンダーの、ド直球かつ恐ろしく効果的な作戦。こいつは恐れ入った。物語の大半は、ダンや警備隊の面々が寒さに苦しめられる様を延々と映す。今回は久しぶりにカプセル怪獣ミクラスも登場、ガンダーと激突する。ダンがウルトラアイを失くす展開とか、よく分からない理由で復活する原子炉とか、詰め不足なところはあるけれど、やはりセブンと怪獣のバトルは念力や特殊能力を駆使していて、マン兄さんとは違った味わいがあって良い。最後、負け惜しみのようなことを言ってポール星人が去っていくなど、脅威が今後も続く余韻を残していて、これもセブンならでは。

 

 

【第26話】

「超兵器R1号」(再生怪獣ギエロン星獣登場)

 ウルトラセブン中期の大傑作! これは本当に凄い。最初の、超兵器を頼もしく思うウルトラ警備隊のやり取りから、ギエロン星の粉砕、怪獣の出現から第一次迎撃まで、とにかくテンポが速い早い。しかもその矢継ぎ早な語り口の中で、ウルトラセブンシリーズ屈指の名言が飛び出ている。「血を吐きながら続ける、悲しいマラソン」――今だからこそ、この言葉は切なる意味を以て心に響く。恐るべき怪獣と化したギエロン星獣の造形やアクションも素晴らしく、特に再生後の戦いでは、放射能の灰を吐き散らすという、とんでもない能力で東京は死滅の危機にまで追いやられる。アイスラッガーを撥ね返すほど硬く、セブン怪獣の中でも相当に強い。アイスラッガーによる必殺仕事人みたいな結末の付け方、今見てもギョッとする。今回は何をどう見たって人間が完全に加害者であり、ギエロン星獣は悲しき被害者。ここで描かれるセブンの葛藤が今後「ノンマルト」や「盗まれたウルトラアイ」などに結実していくと思うと、シリーズの真ん中における、ものすごい重要な作品であったことが分かる。セブンの中でも屈指の完成度を誇る傑作。

 

 

【第27話】

「サイボーグ作戦」(甲冑宇宙人ボーグ星人登場)

 「超兵器R1号」の後だと、どんな話であっても霞んでしまいそうなものだが……その通り。霞みました。ウルトラ警備隊の関係者を洗脳して破壊工作をさせるって、第10話までの間に何回かあった展開。今更それを焼き直してもなあ……という感じがする。セブンとボーグ星人の戦いも巨大感がない。崖の上だと、人間と同じ背丈に見えてしまう。ウルトラファイトかよと。アイスラッガーで首を飛ばすシーンも、投げたら首コロンで芸がない。ボーグ星人のデザインはそれなりに良いと思うけど……。語るべきことがそれほど多く思いつかない回。

 

 

【第28話】

「700キロを突っ走れ!」(侵略宇宙人キル星人・戦車怪獣恐竜戦車登場)

 アマギ隊員フィーチャー回。子どもの頃に工場の爆発を見た時のトラウマがフラッシュバックして臆病になり……という、個人的経緯が語られる。そうした明確な「弱さ」を打ち出したキャラクターは、ウルトラシリーズでも初だったかも知れない。それを克服するためのキリヤマ隊長の「愛情」という話になっていくんだろうけど、それが何回観返してもピンと来ない。というか、事前にアマギの「臆病さ」を隊長たちが苦々しく思っている描写がないと、これは成立しない話だし、ここまでの話の中のアマギ隊員って、ものすごい有能なんですよ。線が細いからフルハシやソガみたいなフィジカルな活躍はないかも知れないけど、それ以外のところでめちゃめちゃ活躍している。そんなアマギ隊員に、今更ウィークポイントを一つ付け加えたところで、どうともならん気が……。レース中に妨害してくるキル星人の「風船」とかも安っぽいし、恐竜戦車との戦いも特筆すべきところはない。ただこの回、爆発が異常に規模がでかいので、そこは一見の価値あり。

 

 

【第29話】

「ひとりぼっちの地球人」(宇宙スパイプロテ星人登場)

 これ、けっこう好きな回! 序盤の変な惚気方をしているソガ隊員や、そこに興味津々なフルハシ隊員が可愛い。が、彼らは今回あくまでも脇役。セブンでさえ脇役で、今回の目玉はプロテ星人が化けている仁羽教授と、彼を宇宙人だと知りながら協力している一宮くん。特に、人間が信用できず、プロテ星に連れて行ってもらうことを条件に協力している一宮くんが、中盤プロテ星人の真の目的を知って騙されていたことに気づき、最後の手段を取る流れが秀逸、かつ無理がない。電送移送機で移送中に何かがあって消滅してしまうのは、『伝送人間』のクライマックスにも通ずるものがある。プロテ星人の「抜け殻」に翻弄されるセブンのシーンは、夜のひっそりとした研究施設という舞台を効果的に使って、独特の雰囲気を出していた。プロテ星人と一宮の末路を細かく描写せず、最後にもしや……? という音の演出を入れてくる辺りもニクい。登場人物のキャラクターの面白さと、それがしっかり結びついた話運びとで魅せる、中々の秀作。面白かったです。

 

 

【第30話】

「栄光は誰れのために」(プラスチック怪人プラチク星人登場)

 ウルトラ警備隊の乗り物が乗っ取られる展開は、キュラソ星人以来? 今回はマグマライザーが乗っ取られ、しかも逃走用とかじゃなくて戦いを挑んでくる。なるほど、確かにウルトラ警備隊のメカニックは超強力なんだから、それを掌握すれば相当な武力になる。中々賢いプラチク星人だが、あんまり印象に残らないのは、メインヴィランの青木のキャラが立ちすぎているから。冒頭から嫌味な感じの独断専行が目立ち、「ああ、こいつ最後には死ぬな」オーラがビンビンの青木さん。手柄を立てるためにマグマライザーの乗組員や警備隊を犠牲にするという完璧アウトな行為までやってのけている。ここまで私利私欲に走った人間は、今までいなかった。前作の一宮くんだって、自らの信念に基づいて行動し、それが間違っていると分かった時にはすぐさま反旗を翻したわけだし。というわけで、ここにもしクラタさんがいたら、瀕死のところをビンタくらいじゃ済まされない目にあわせられそうな青木さん。しかし彼という完全にアウトなキャラクターがいるからこそ、ウルトラ警備隊の6人の絆や信頼関係が強く意識されるのは事実で、特に今回は、何気ないところで互いが互いを信頼しつつ、気にかけている描写にグッと来るものがあった。そういう点で言うと、やっぱりダンとソガの関係が、一番見ていて気持ちが良い。