『ウルトラマン』第6話、「バラージの青い石」に登場した、磁力怪獣アントラーを紹介します。
バルタン星人に続く、虫顔の怪獣。向こうがセミなのに対して、こっちはアリジゴク。デザインは成田亨氏が手がけ、「クワガタの顔をした人間」がコンセプトだとか。それを妖怪じみた姿ではなく、ちゃんと怪獣として完成させているのが凄いところ。
ウルトラマンの怪獣の中では、準人気な立ち位置のアントラー。ゴモラやレッドキングのようなメジャーどころではないものの、その異質なデザインは注目されて、『マックス』以降、再登場に恵まれている。ウルトラ怪獣シリーズでも、結構初期にソフビ化しましたね。
このソフビ、凄く完成度と再現度が高い。いわゆる、隠れた傑作です。色も綺麗だし、アントラーの、硬そうで柔らかそうな外骨格の表現もばっちり。ソフビと相性の良い怪獣なのかも知れませんね。
肩部分だけ、緑と青が混じっているのがコガネムシっぽくて良い。シンプルながらも、部分部分の重なりによって単調にならないようにしている。
人間的な二足歩行スタイルではあるものの、手足にわしゃわしゃを付けたり、腹部を甲虫的な硬質表現にしたりと、虫モチーフの怪獣であることを印象付ける造形に富んでいる。それでいて、虫過ぎない絶妙なバランスです。
ここは結構リアルでキモい。
でっかい大顎を付けた頭のコイツを自立させようとも思ったら、足は固めちゃった方が良いのかもね。
体色は基本グレー。その中に黄色いラインが走っているのが印象的。
ウルトラマンの怪獣のカラーは基本、シンプルです。後世の超獣のように奇抜なやつ、ごてついた奴はあんまりいない。ただその中でも、体に色の線を付けることによって、それがアクセントとなっている怪獣は多い。アントラーの場合は、特にそれがよくハマっていると思う。
重量感があって、かっこいい。
本編でも、凄く強かったですよね。あらゆる交戦技をはね返して。青い石がなかったら、ウルトラマンはアントラーに負けていたかもしれない、とは、『小さな英雄』におけるハヤタ隊員の弁。
ざっくりしているようで、口元は非常に複雑。触覚的に飛び出している目も、ちゃんと再現していて偉い。
今、アントラーをデザインし直すとなると、もっとより昆虫に近い造形になるんでしょうね。個人的には、良い意味で着ぐるみ感というか、甲虫の頭に人体という構造で、ちゃんと怪獣然としているアントラーのバランスは唯一無二の正解だと思うので、この造形を愛し続けたいところです。