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意を決して“断薬”のために精神病院に入院して頂いたにも関わらず、なぜか断薬もなにもされないまま、ただ足を奪われ寝かされていたレビー小体型認知症の兵頭さん(男性・81歳)。その姿にショックを受け、ひとり涙した私。その後……。
兵頭さんのお見舞いから帰った私は、すぐにホームの施設長と看護師に訴えました。断薬のための入院ではなかったのか!?と。
すると驚いた施設長と看護師。すぐに病院にクレームの電話を入れてくれました。どうやらやはり、ただなにかの手違いで断薬がされていなかっただけのようです。
そしてようやく本当に断薬が開始され、その約3週間後。兵頭さんの退院が決まりました。
少しやつれた顔で、でも兵頭さんは笑顔で帰って来られました。
「あ、どうも!」
あの、昔ながらのご友人に見せる素敵な笑顔です。
私たちスタッフはもちろん、なじみの利用者さんも皆、満面の笑顔でお迎えしたことは言うまでもありません。
……しかし兵頭さんは、車椅子で帰って来られました。
約1ヶ月半の入院。歩いて出て行かれたのに、車椅子で帰って来られました。
そりゃそうです。入院中ずっと、義足を取られ、トイレも連れて行ってもらえず、寝たきりにさせられていたのですから。
元々筋力が弱っている高齢者にとって、1ヶ月半の寝たきり生活が、どれほど多大な影響を及ぼすかなんて簡単に想像がつきます。
入院生活により少し痩せてしまわれた兵頭さんの足は、もう既に義足が合わない状態になってしまっていました。筋肉も落ちて足が細くなってしまった為、付けようと思っても義足がガバガバ。ただでさえ弱った足にそんな物を付けても、危険でしかありません。
もし、義足を作り直してリハビリをすれば、また歩けるようになるかもしれない、という状況ではありましたが、ご家族さんと相談した結果、もうそれはせず、歩くことは諦めて、車椅子生活にしてくださいとのことでした。
少し寂しく悲しい判断ではありますが、充分理解できる、まっとうな判断と言えるでしょう。
そして肝心の断薬に関しては。
それまで何種類ものややこしい薬を飲まされていた兵頭さん。それらは全て中止され、漢方の抑肝散のみ処方された状態になっていました。抑肝散は、怒りっぽく興奮しやすい人や、不眠症の人に処方される漢方薬。これもまた、認知症の方によく処方される薬のひとつです。
抑肝散には認知症の進行を遅らせるような効果はありません。ということは、兵頭さんには、認知症の薬は処方されなくなったということ。
しかし、認知症は不可逆的な病気であり、いくら薬を飲んでも直すことはできません。あくまで進行を遅らせるだけのこと。
正直なところ、それが実際どの程度効いているのか実感するのは難しく、その上、その薬によって攻撃性などの周辺症状が出てくる場合もあり、扱いは難しいものです。
認知症の薬を飲むことは本当に正解なのかどうか。これは人によって、意見が分かれるでしょうね。
……とにかく兵頭さんの場合、いろいろな薬を止めて抑肝散だけにした結果、暴力は減り、穏やかな時間が増えた気がします。
幻覚は治らず、常に“なにか”を触って手を動かしているのは変わりませんが、徘徊することもなく、おとなしくテーブルについていらっしゃるのです。当たり前ですね。もう、歩けませんから……。
結果的に、総合的に考えて、この入院が正解だったのかどうかは私にはわかりません。たぶん誰にもわかりません。
ただ、兵頭さんの表情が穏やかになり、他の利用者さんが兵頭さんに部屋に侵入されて不安に思うこともなくなり、我々スタッフが頭を悩ませることもなくなった。
それは事実であるため、足を失った兵頭さんには、大変申し訳ないですが、お許し頂ければいいな、と願います。
※先日、アメリカで「アデュカヌマブ」という新薬が承認されましたね。これが日本でも使えるようになれば、アルツハイマーに関しては、“可逆的”な病気となるかもしれません。
この新薬が効果的で、かつ、日本でも早く承認されますように…。