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 真夜中のおしゃべり相手、蓮田さん①

 蓮田さん② 物盗られ妄想編

 蓮田さん③ 暴言編

 蓮田さん④ 孤立編

 

 

 困ったことになりました。

 レビーでアルツハイマーな認知症、兼、統合失調症の蓮田さん(女性・84歳)。暴言だけならまだ良かったのです。

 いくらひどい言葉を吐かれても、それで実際ケガをすることはまずありません。すぐに忘れる、又はそもそも理解ができない方が多い介護施設では、それが更なる事態に発展することもほとんどありませんから。

 

しかし、出てきてしまったのです。暴力が。


 

 蓮田さんの相手をすると、ひどく爪を立てて引っ掻かれることが、度々起こるようになりました。私の腕には、一生痕が残りそうなほどの爪痕もできています。

 

 ある時は、蓮田さんが叩きつけた物を拾おうとしてしゃがみこんだ私を、蓮田さんが上から何発も何発も殴りつけ、立てなくなったこともありました。

 いや、立とうと思ったら充分に立てるのです。しかし、私が蓮田さんを払いのけて立ってしまえば、蓮田さんはもしかしたら体制を崩して転倒してしまうかもしれません。それを思うと私は立つこともできず、しばらく殴られ続けることとなりました。

 

 

 そんなことが続き、スタッフの我慢にも限界が訪れようとした時、ひとつの出来事が起きました。蓮田さんが、他の利用者さんの足に、ガンガンと苛立ちをぶつけるようにして、シルバーカーをぶつけたのです。

 

 幸いぶつけられた方は転倒することもなく、アザひとつ作らずに済んだのですが、これは、大きな出来事でした。

 

 

 大勢の他人が共同生活を送る介護施設において、特に、決して起こしてはならないのが、利用者さんが他の利用者さんに暴力を振るうこと。

 それは健常者の大人のケンカとは全く事情が異なります。それが認知症の方だった場合、加害者も“悪い”とは言えず、強いて言うならそれは施設側の管理責任に。

 ご本人同士が危険であるというだけではなく、万が一ケガでもさせてしまったら施設の訴訟問題にも発展しかねない、えらいことなのです。

 

 例えば兵藤さんの暴力性は、邪魔をしたり驚かせたことでしか発生しないため、スタッフにしか向けられることはありませんでした。

 しかし蓮田さんの場合、暴言の時もそうだったように、攻撃の矛先はスタッフだけに留まらず、全ての利用者さんを狙っていました。

 

 

 

 こうして、まずは担当医に相談することとなりました。