私、結構小柄なんですよ。身長約150㎝。でもそれは案外珍しいことではなく、どちらかと言えば女性が多い介護の現場において、私と大して変わらない身長のスタッフも多ければ、私以上に力もなく、か細い女子もいます。

 

 それでも実は、そこまで苦労することは多くないんです。なぜかと言うと、高齢者ってどちらかと言うと身長縮みますし、どちらかと言うと痩せていくことが多いようで。

 さらに言えば介護施設の利用者さんの男女比はかなり女性が高い為、元々小柄な方が多いんですね。

 

 

 そんな中、我々介護スタッフの悩みの種になってしまう方がいます。加藤さん(80歳・男性)。身長が180㎝近くあり、肉付きもまだそこそこよろしいんです。

 でもその割に立位もとれず、入居の時点で既に関節の拘縮が。膝が“く”の字になったまま固まってしまっています。そしてさらに言えばアルツハイマー型認知症により、うまくこちらの指示が通らず、介助の時にご本人の協力を得ることもできません。

 

 

 こんなことを言っては本当に申し訳ないですし、失礼だとは思うのですが、正直言って結構怖いんですよショボーン

 

 考えても見てください。自分より30㎝も大きな、体格の良い男性。自分よりずっと力も強い男性。固まった関節を伸ばしたりして痛みを感じると、たまに手が出ます。たまに大きな声も出ます。

 

 信頼関係、もちろんありません。入居当初なんて、ただの見ず知らずの男性ですから。

 

 初めて加藤さんにお会いした時、『この方を一人で移乗介助するなんて無理』と思いました。ベッド⇔車椅子への移乗。立位が全くとれない為、全介助です。

 でも、不安を口にしても、「これまでもちゃんと一人介助でできていたみたいだから、できるよ。まぁやってみて。」と上から無責任なお達し……。

 

 とりあえず安全のために、一人がいつでもフォローできる体制で隣に立った上で、一人介助を試しました。そしてその結果。

 結論から言うと、なんだかんだで皆、一人介助で移乗できたため、すぐにフォロー体制も止め、完全に一人介助になっています。やっぱり、それなりに我々には技術もあるわけですし、頑張ればできてしまうのですよね。

 

 でも、できるとは言え、かなり無理をして腰にも負担を掛けていますし、やっぱりどこかにある恐怖心は拭えません。

 拳を振り上げる同じ動作でも、小柄な女性が行うそれと、大柄で力が強い男性が行うそれは、全く違いますから。

 もしそれを移乗介助中にやられてしまったら?ただでさえギリギリで行っているのに、私は加藤さんを支えきれる自信がありません。

 

 

 

 ……そんな加藤さんも入居されて月日が経ちました。私たちはだいぶ慣れることができましたが、認知症である加藤さんの脳に、私たちの顔がインプットされたとは思えません。

 なんとか無事に、事故も起こさず介助をすることができています。 ただ ――― もちろん一切顔にも態度にも出しませんが、やっぱりどこか拭いきれない恐怖心。

 

 

 

 こんなスタッフの心情を知ったら、加藤さんもさぞ不本意でしょうねぇ……。