移乗とは、日常生活の中で行われる「乗り移り動作」のこと。ベッド、椅子、トイレと、立ったり座ったりを繰り返す私たち人間に欠かせない動作であり、移乗介助は足が弱ってしまった方の介護に欠かせない介助であります。

 三大介護というものがありますが、食事、排泄、入浴、その全てにおいて当然移乗は必要。ということは、移乗介助が満足にできなければ、介護人失格ということですね。

 

 でも、それなりに経験のある介護士ですら、『移乗介助を完璧にこなせる!自信がある!』という方は、少ないのではないでしょうか。私も自信なんて全く持てません。

 だって、これは私の主観ではありますが、様々な介助の中で一番難しいもの、それは“移乗”ですから。

 

 

 しかし、介護を始めた当初、『奥が深くて面白い!』と思ったのも事実です。

 普段何気なく行っている動作は、細分化したらこんな動きの連続なんだ!という発見。今までの長い人生でずっとやってきたのに、一度も頭で考えたことがなかった不思議。

 

 例えば“立つ”という動作は、①まず足を引き、②頭を前傾し、③重心を頭の方に移動し、④地面に反発するように足に力を入れることでできることです。

 一般的な筋力の人間は、膝の角度が90度以上だったら立てませんし、頭が前傾しないように抑えられていたら、決して立つことができません。

 

おもしろいじゃありませんか。

私って、そんな風にして動いてたんだ!

 

 

 

 立つ動作、座る動作、寝る動作、寝返りを打つ動作、起き上がる動作、歩く動作、服を着脱する動作、ご飯を口に運ぶ動作、飲み込む動作……。

 移乗介助に関わらず、全ての介助において、まずは自分自身がどのような動きをしてそれを行っているのか。それを実際に自分でやってみながら、細かく細かく分析してみることが大事です。その時手は、足は、どこに置き、どのように動いているのか。重心はどこにあるのか。どこに力を入れる必要があるのか。

 

 そして介助する時に必要なのは、その自分がやっている一般的な動きをなぞるようにやってあげること。たとえ全介助でも、それをなぞることで両者共に楽になります。

 

 また高齢者の様な筋力が弱った方には、その各動作を健常者以上に大きく行う必要があり、例えば“立つ”動作にしても、お尻を前方にずらすという動作の追加や、座面の高さを高めにするなどの環境整備も必要になってきます。

 

 そもそもどんな介助でも、個人差があるので人それぞれ状況に合わせてやり方は変えなければいけません。

 しかし移乗は、その方の体格から身体疾患の状態、椅子の高さなどの環境など、本当になにからなにまで千差万別。

 そして下手をすれば転倒をして怪我をさせてしまったり、自分が体を痛めてしまったり、危険につながることも充分に考えられます。だから介助の中でも特に難しいんですよね。

 

 

 

 人体のメカニズムだけでなく、力学(大事!てこの原理!)なんかも関わってくるこの介助。おもしろいじゃありませんか。

 自身で試しにやってみることは、介護を始めて何年も経った今でも私がたまに行うことです。

 介護初心者でそんなこと考えたこともなかったと言う方。もしいらっしゃったら、手始めに是非やってみてください。今までうまくできなかった介助が、驚く程スムーズにびっくりできるようになるかもしれませんよ。