前回、たとえ認知症の方でも、本人を置き去りにせずに、本人の意向や意見を聞くべきだというお話をしました。たとえ施設入居をするかどうかというような難しいことでも、ご家族さんが罪悪感を抱えずに済むためにも、一度はご本人と話をすべきだと。

 反論したかった方もさぞ多かったのではないかと思います。

 

 

 老人ホームに入居させるということは、ひと昔前と比べて随分一般的なことと認識されるようになり、周りに白い目で見られることもあまりなくなり、ご家族さんとしては、まだやりやすい時代になってきました。

 

 しかしそれでも、私が所々で感じてしまう、ご家族さんの抱えている罪悪感

 特に強い罪悪感を持ってしまわれるのは、やはり、ご本人に事前に何も言わず、騙し討ちのようにして施設に入居させてしまったご家族さんの様です。

 実際、入居して長く経った後でも、後悔の念を口にされることがありますし、きっと亡くなった後でも、その罪悪感は心のどこかに棘のようにして引っかかったままになるのではないでしょうか。

 

 

 

 そんな罪悪感をできる限り持たないために、必要なこと。

 それは、まずご家族さんご自身が、「老人ホームは良い所。入居は確実に“善”である。」と、心から思うことだと思います。

 

 

 

 

ということで、プレゼンです。老人ホーム入居のメリットとは。

 

①ご家族の心身の負担を軽減できる。

②介護士又は看護師の24時間対応で安心。

③介護のプロによるサービスを受けられる。

④家族以外の人と接触する機会が得られる。

 

 これらが、よく挙げられるメリットです。その通り。どれも正解。①と②は説明すらいらないですね。

 

 

 補足をするとしたら③。正直、スタッフ全員が“プロ”とは決して言えないのが現実ではありますが、それでも各施設、介護のプロは必ずいます。少なからずいます。何十人も何百人も実際に介助をし、いろんなケースを見て経験を積んでいるプロがいます。

 

 Aさんのことは、Aさんを10年介助していたご家族さんが一番よく分かるかもしれません。しかし経験豊富なプロが多角的に見ると、Aさんの問題は簡単に解決するかもしれません。

 たまに、「今まで10年も私が看てきたんだから」と介助方法など、なにからなにまで指示をしてくるご家族さんがいるのですが、プロの経験値を、バカにしてはいけません。

 

 

 そして④。これは、本当に大きな点だと思います。特に、まだご自身で行動できる方の場合。

 要介護状態になると、買い物などで外に出られることもあまりなくなり、本当に狭い世界で生きることになると思います。会って話すのは家族だけ。そしてその家族は、介護に疲れてツンケンしていたり。そんなの、精神衛生上、良くないに決まっています。

 

 大抵の高齢者が抱える辛さとはなにか。

それはいくつか挙げられますが、“友人との繋がりも潰え、他人との関りが減り、孤独に陥ること。”これは代表的なものではないかと思います。

 

 この辛さは、家族以外の他人と関わることでしか、紛らわせられないことなのかもしれません。

 ほんの数人の家族の中で過ごすのとは違って、施設に入ると、他の利用者さん、スタッフ、医療関係者と合わせて、数十人の人間と関わることができます。たとえ人見知りな方でも、実際に関わるのと完全に閉ざすのとでは孤独感は全く違う。

 

 

 介護施設と一口に言っても、老人ホームの前段階に、デイサービスというものがありますよね。あと、ショートステイも。

 それらももちろん他人との関りを増やすものなのですが、やはり“たまに訪ねる場所”と“自分が住む場所”の違いは大きく、入居となるとご本人の覚悟から変わってくるようです。

 

 「デイサービスで他人に気を使って愛想を振りまくのは大嫌いだったけど、ここは違うわ。皆の終の棲家だもの。付かず離れず、寂しくならない程度に付き合える。何年も付き合うかもしれないから無理はしないけど、嫌われたくはないからある程度気は使う。自分を保つために、距離感が丁度いいのよ。」

 

……とは、出見婦人の言葉です。

 

 こんな風に語れる利用者さんはそう滅多にいませんが、それはもしかしたら、多くの利用者さん共通の気持ちなのではないかと、私は思いました。

 

 

 

 

 

まだ長くなるので続きます。

 

 

 

【追伸】

 「老人ホームが良い所だって思いたいのはやまやまなのに、そっちが思わせてくれないんじゃないか」というお言葉が聞こえてきそうですね。わかってます。残念ですが、痛い程にわかっています。だから日々、こうして頑張っています。