介護に入る前に一番最初に取り組むべき課題は、信頼関係を構築することです。介護を本格的に始めると、要介護者の生活全般に介入することになります。さらに病気が進行した場合には、生死を決断するような重大な決定を要介護者の代理人として行わなければならなくなります。
最初は、雑談に付き合うところから始めます。要介護者の話をこまめに聞いているとどんな生活をしているか、どんなことに困っているかもだんだんわかってきます。
介護家族者(家族による在宅介護のうち、本書では、要介護者の介護に対して全般的な責任を担う者を介護家族者として定義しています)がちょっとした困ったことを解決するようにすると、要介護者が信頼し、使うようになってくれます。例えば、『米や水などを買い物するのが大変』と聞いたら、その輸送支援するようにすれば良いのです。最初は、こう言った小さな協力を行うようにして信頼関係を構築していきます。注意すべきは、要介護者が過大な要求をしてきたら、『それは無理』と伝えることです。どこまでなら要介護者の要求に対応できるかを介護家族者が自ら知ることもこの時期においては、非常に重要です。
親子関係がうまくいっていない状態で、要介護者と介護家族者の関係として信頼関係を構築するのは難しいです。父親や母親の介護をしなければならないが、親側または子ども側が、感情的になって暴言が飛び出す、暴力に発展するなどの場合には、この時点で在宅介護は諦めるべきです。介護が必要になった場合には、速やかに市役所(介護保険担当)にその旨(親子関係が破綻していること)を報告し、家族による在宅介護ができないことを宣言するべきでしょう。
介護が必要になった人を放置すると犯罪行為として厳しく処罰されることになるので、家族で介護する、家族で介護しない、を家族は十分に検討し、話し合った上で決める必要があります。ただし、介護家族者が責任を全うできないと判断している時には、いかなる場合でも家族による在宅介護は諦めるしかありません。
この時期に信頼関係を構築することができれば、要介護者の生活全般の情報をかなり正確に把握することができるようになります。また、介護が必要になった時にどんな介護サービスを受けたいか、病院に入院する場合にどんな医療サービスを受けたいか、どんな手術や医療処置を希望するか、といったことを将来、要介護者に尋ねるための下地になります。
(電子書籍「介護はプロジェクト」から一部抜粋)
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