舞踊さんともう1人、重度の利用者さん

この方は「百姓だった」とのことで

確かに垢抜けた感は無いものの、顔はキレイで

70過ぎた今でも美男子に見えるため

若い時はさぞハンサムだったのだろうなーと思う。

 

ちょっとイメージが違うけど、顔つきが

黒夢の人?に似てる気がするので黒夢さんと呼ぶ。

 

 

今時の・・似た感じの俳優さんがいるが、名前を知らない。。

 

 

舞踊さんはおっとり囁きボイスの人だとしたら

黒夢さんは、何言ってるか分からないけど激情型の人。

喜怒哀楽を明確に示す。

大方ゴキゲンで、新人の私にもニコニコと視線を向け

話しかければ 「ハイ!」「ソウネ!ハイ!」

ポジティブな対応。

入浴介助の時は「ゴメンネ!ゴメンネ!口笛」何故か謝り続けたり。

 

 

でも稀に、怒った表情で「’&%$#!!💢」叫んだり

「#$%’’◯・・・😢」目に涙を浮かべて何かを訴えたりする。

 

いずれも内容はよくわからないのだけど

じっとそばで話を聞いていると落ち着くので

放って置かれて寂しい!ということかもしれない。

 

やはり意思疎通がしづらい利用者は、対応時間がかかるため

後回しにされることが多い。

他の雑用を全部終えて「さあ、やりますか」といった感じで

黒夢氏の元へ行くと、目で何かを訴えながら

こちらの指をギュッと握る。痛い。

ものすごい握力。

立てないし姿勢を保つこともままならない体、なのに握力だけ強い。

他にも農夫だった人がいるけども、この方もすごい力だった。

百姓仕事ゆえの力なのだろうか。

 

食事介助の際は

「離してくださいね〜このままじゃ何も食べられないですよ?」

と、何度も言わないとなかなか離れない手イラッ

 

「おいしいですか?」

「ウン!ソウダネ!」

「黒夢さんはお百姓さんだったんですよね」

「ソウナノ!!」

 

認知は進み、彼は今、自分がどこにいて

どういう状態なのか分かっているのかいないのか。

帰りたがったり拒否をするようなことはほとんど無く

全てを受け入れているようにも見える。

元々の性格なのかもしれないが。

 

若い時は体を動かし、自分で食べるものを自分で作っていた。

今は食べることも、着替えをすることも1人では出来ない。

 

そんな黒夢氏を見ながらおばさま方がヒソヒソと喋る。

 

「今日もあんなキレイなシャツ着てね」

「奥さんがね〜 ほんとに・・・」

 

やぎ座

 

体に麻痺がある人は、着替えが大変になる。

曲がるはずのところが曲がらず、力が入るはずのところが入らない。

ゆっくり時間をかけ、丁寧にやれば問題ないのだけど

ご家族は毎日のこと、時間にも追われ

雑になったり乱暴になったりすることもあると思う。

 

利用者によっては

毎回同じ服を着ているのでは・・・おばけくん?な人や

これ何日着てる服だろう・・・ハリネズミ? な人

服を着させるときに、がーーっと引っ張ったのだろう

首の周りが伸びきっちゃってビローーンとなってる人ネザーランド・ドワーフ

 

そんな「どうせまたすぐ汚すし、面倒だからさっさとこれ着ていけ!」

 

的な感じで・・・施設に来る人がチラホラいる。

 

仕方ないのかもしれない。

本人が気にして無いならそれでいいのかもしれない。

 

 

が、

 

黒夢氏は違うのだ。

おそらく本人は、着る物なんてなーーんにも気にして無い様子。

 

しかし襟のあたりはしっかりと型どられ?伸びてない。

いつもパリっと清潔、洗濯されたばかりの白いポロシャツ🌟

 

おばさま方は(ひそひそと)言うのだ。

 

「あんな状態になっても、大事にされてるのよあの人は」

「ほんと!いつもキレイな服よ。奥さんだって歳取ってるのにサ。大変よ〜」

 

そして結論はこうなった。

 

「あれはね、若い時に相当大切にしてあげんたんだよ」

「そうだわね。きっとそうよ。若い時のツケだよ」

「大切にしなければ適当にされるしさ、あの人は大事に大事にしてあげたんだね!」

 

 

『・・・・・・・・・・・・』

 

 

 

その場にいる独身男性は

 

                   (そんな奥さんと出会えるんだろうか?)

 

と空を見上げ、

 

 

既婚男性は

 

                 (俺は将来、そんな扱いをされるだろうか!??)

 

 

地面をじっと見つめ

 

 

女たちは

 

 

      (私・・・・・・・・・・・どうだろ?)

 

 

 

互いに目線をそらす。

 

 

 

キョロキョロ..