●まだまだ盛り上がりを見せる保育園不足のニュース「
保育園落ちた」以降、連日保育所の定員不足がニュースになり、
保育士不足は「
低賃金が主因の一つだから、待遇を改善せよ」という主張も与野党問わず飛んでいます。
野党は「一律5万円UP!」と息巻いていて、その財源を介護を含めた福祉財源に求める声すらあります。少し前まで「2025年問題!
介護士を増やせ」なんて言ってたのに、ニュースやSNSの力は怖くすらありますね。

ところでニュースでよく出てきたキーワードとして「保育士の平均給与は社会平均より
10万円低い」というものがあります。介護職不足のニュースでも、「介護職の平均給与は社会平均より
10万円低い」ということが言われていましたが、では保育士賃金=介護職賃金なのでしょうか?
厚生労働省「賃金構造基本統計調査」によると
保育士の平均年収は
約317万円とのこと。全業種平均で約440万円ですので、実際に
月10万円ほど安いようです。
一方、
介護職は
約365万円。ただし、従業員に限れば施設系280万円、訪問系260万円というデータもあり、こちらの方が介護の現場で働く方の実感に近いかも知れません。また保育士が勤続年数にほぼ給与が比例するのに対し、介護職はケアマネや施設長から無資格の方まで、様々な人を含んでいます。
ちなみに
幼稚園教諭は厚労省の資料で
平均347万円です。
●介護職や保育士の給与はなぜ低いのかまず、
数字上低く表れやすいという問題があります。以前のブログ(
http://ameblo.jp/kaigomap/entry-12055495856.html)でも紹介した数字ですが、介護職の
勤続年数は6年弱です。保育士は8年弱。大手企業ですと20年前後になるので、こうした対象者の違いがまずあります(当然調査対象の平均年齢も異なります)。
また、保育士も介護職も
女性比率が高い。数字上は全職種平均で年収が
男性524万、女性364万程度ですので、男女比の問題は数字への影響が大きいです。これは男女の格差が社会に根強く残っているのと同時に、男女の平均勤続年数差(就業者の年齢差)も大きく影響しています。
また学歴による賃金格差は
大卒以上と短大卒以下で
年間約170万円にもなり、やはり大卒以上の比率が高い業界ほど、平均賃金も高くなります。
また、従業員が数千、数万を超える超大手が少ないことも、介護や保育業界の賃金が低く表れる一因になっています。
こうしたフィルターを全部とっぱらった場合の数字は、
見た目ほど大きくはないはずです。しかし、それでも保育士や介護職が世間の同学歴、同性、同勤続年数の平均に
全然届いていないのは確かでしょう。なぜでしょうか?
●職業の専門性を社会にアピールしよう
ここで冒頭の保育士と幼稚園教諭の賃金格差がなぜあるのか、考えてみましょう。
保育士の仕事は
育児です。一方、幼稚園教諭は小学校の先生などと同じく、
教育が仕事になります。仕事の実態が似ていても、保育士資格は厚労省、幼稚園教諭の資格は文部科学省の管轄となります。介護福祉士も厚労省の管轄ですね。
厚労省が悪いわけではないですが、ここに仕事に対するイメージ差が生まれます。つまり「教育者である幼稚園教諭は
専門職である」一方、「保育士や介護職は、本来
家庭で行うべき役割を外に出している」という認識です。ハッキリ言えば、「保育士や介護職は
誰でもできる仕事をしている」と思っている方が多いということです。
もちろん実際はそんなものではありません。寝たきりの老親の介護に苦労している人から見れば、デイでの素早い入浴介助は
魔法を見ているようです。育休中のお母さんにとっては、10人の1歳児が一斉に昼寝している光景は、何かの
奇跡を見ているようです。そこに
専門職ならではの技術やノウハウ、勉強のあとがあるわけです。
介護職や保育士を広く確保するために、資格のハードルを下げることや「誰でもすぐできます」というような求人も必要でしょう。でも並行して、あるいはそれ以上に、介護職や保育士の仕事は、
プロフェッショナルである、という業界全体のアピールが大切なのではないでしょうか。
超少子高齢化問題がある中、幸い世間の耳目は当分介護問題、保育園問題に集まり続けるはずです。
労働環境の悪さばかりがマスコミに取り上げられますが、その
専門性を取り上げてもらうことが、構造的な低賃金脱却に必要だと思います。
●厚労省の管轄になる業界とは…
もちろん専門性の有無以外にも低賃金の原因はあります。一般に厚労省は、社会の
セーフティネットに関わる業界を管轄します。医療を含め、
低収入の世帯を含めた全国民がサービスを受けられるように、保険や補助金などの制度があり、お金持ちだけを対象にバンバン儲けることが難しい仕組みになっています。利用者保護の観点からは正しいのですが、現状では現場の従業者にその
しわ寄せが来ているとも言えます。こちらはより難しい問題ではありますが、介護士や保育士の専門性が、学校の先生並みだと認められれば、
相応の待遇になっていく、はず…。