介護施設づくりの基礎知識 その13「トイレ手すり」 | 介護環境快適化講座

介護施設づくりの基礎知識 その13「トイレ手すり」

 
介護環境デザイナーの間瀬樹省です。


おむつに頼らない排泄を実現するには、便器に座ることが不可欠ですね。


便器に座る際に、その動作を手助けするのが手すりです。


今日はその「手すり」についてお伝えします。


車椅子トイレの手すりの定番といえは「L型手すり」ですよね。


今でもメーカーのカタログの参考例や、トイレ設計の教科書的な書籍にもL型手すりの設置が紹介されています。


でもそれで本当に良いのか、について考えてみましょう。


L型手すりの縦の部分は、一般的に体重の縦移動の時に使う、つまり立ち上がりや便器への着座の際に使用すると言われています。


でも介護について学んだ方であれば、お年寄りが立つための動作ってどのような動きになるか良くご存知のはずです。


まず浅く座り替えて、お辞儀をするように前かがみの姿勢をつくり、重心が両足の上に来た状態で立ち上がる、というパターンです。


この時にL型手すりの縦部分って使いますか?ほとんど役に立たないと思います。


前かがみの姿勢でバランスがとれるように、両手を前に出した際に使える手すりがあれば良いはずです。


また、立ちあがった姿勢で体を支える際には手すりの上部を握りますが、この際も両手を使うことができるなら1本を両手で持つのでなくそれぞれ別の手すりを握った方が体が安定しそうです。


次にL型手すりの横の部分、ここは便器に着座している際の姿勢保持が主な役目と言われています。


でも排泄が行いやすい姿勢ってどんな姿勢でしたっけ?


排泄に適した姿勢は軽い前かがみの姿勢、腹圧がかかりやすく直腸の角度も排泄しやすい角度になりますよね。


この姿勢を支えるためには、前方の体の近くに姿勢保持用の手すりを設置するのが最適であると思われます。


こう考えていくと、どうもL型手すりは高齢者施設のトイレには向かないということが言えそうです。


ではどのような手すりが良いかということですが…


立ち座り、排泄姿勢保持、どちらも体の前方に手すりが必要になりますが、最適な設置位置が異なります。


立ち座りの際は体から離れた位置、着座姿勢保持の時は体の近くに設けるのが良いですね。


以前は、この2つの動作のために手すりを2つ設置している施設もありましたが、いまはこんな商品が発売されています。


>前方ボードスイングタイプ


スイング式で動くようにしたことで、どちらの動作の補助にも使用できるようになっています。


このメルマガを以前から読んでくださっている方はご存知だと思いますが、実はこの製品の検証に協力させていただきました。


実際に介護をされているかた、また利用者さんに実験空間にて使用していただき、その有効性を確認したのです。


壁に付ける手すりはこちらがおすすめですね。


下記の事例の脱衣室やトイレにある格子状の手すりがそれです。


20160506_トイレ1


20160506_トイレ2



片手でも両手でも、縦向きでも横向きでも好きな高さ・位置をつかむことができます。


利用者さんの反応をみると、最初は「どこをつかんだらいいのだろう」と少々戸惑いますが、すぐに最適な位置を見つけて使えるようになるようです。


便器に座り、その姿勢を保つことができることはとても重要、そのためにはこれらの手すりを上手に使用することが必要です。


介護施設の設計時には、これからのことをしっかり配慮してぜひトイレでの快適な排泄を実現するようにしてください!


実際に計画を進める際や設計上でのご質問などあればメール等でお問合せください。


介護施設の設計は「ケアスタディ株式会社」へ。
>ケアスタディ株式会社


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