私は6年前に卵巣腫瘍の摘出手術を受けた。

子宮卵巣全摘出とリンパ節もとる予定だった(リンパは結局とらなかった)

27センチの開腹手術だった。

一週間も家に帰らないのは結婚してから一度も無く、特に夫がALSになってから入院中も付き添い

いつも一緒にいたのでとても不安だった。

入院中は、介護のみなさんが勤務時間を増やし、

夜中は娘たちが泊まりこみ夫をみてくれていた。

何かあれば夜中でも走ってきてくれるとヘルパーさんも言ってくれていて心強かった。

当時夫はまだLINEができていたのでたわいも無いことをLINEしてくれて、励ましてくれた。

離れていたので、

昔の夫の姿を何度も思い出していた。。


個室ばかりの病棟だったので必然的に個室だったのだが、

夜の6時にご飯を食べるとすぐに電気を消してほとんどずっと寝ていた。昼間も寝ていた。

とにかく眠れた。何時間でも眠れた。

普段ちょっとの音で目が覚め、

吸引で夜中に起きたりしているのに、

入院中は看護師さんが入ってきても起きることはなかった。

看護師さんが個室だからずっとテレビを見て過ごしていいのよと言ってくれたけど、

持参してた本も一切読まずに寝ていた。

あの時に一生分の寝溜めをしたと思う。


夫が心配だった。。経過もよかったので

予定より3日早く退院させてもらえた。

トイレもさせてあげたかったし、いろいろなことが気になっていた。

でも帰ると家のこともちゃんとしていて、

介護もとてもいいリズムで行われていて感動した。

私は私で退院したのに力も出せず、

体力も無く、

帰ってきてもフラフラで横になってばかりだった。

仕事もしばらく休んでいたと思う。

外に出たとき、

大きな交差点では青信号になってすぐに出発しないと渡りきる自信がなかった。

早く歩けないし、駆け足もできない。

歩いている時に、

前から後ろから飛ばして走っている自転車や、時にはスタスタ歩く人がぶつかったらどうしよう、、

と怖くてたまらなかった。


その時に、歩けなくなっていった夫のことや

お年寄り、足の不自由な人のことをいつも思っていた。

交差点で涙が出てきた。。

今までそんなことを考えたことがなかった。

もちろん、気をつけていたつもりだったが、

怖さを味わって本当の気持ちがわかったような気がした。


夫は元気な頃、歩くのがとても早くて

追いつかず、いつもケンカになっていた、、

そんな夫がALSになって、

会社の駐車場からたった10メートルほどの道路を

今にも転びそうに一生懸命、

一歩一歩丁寧に慎重に

歩いていた。。

私は心配で、、

あの独特な歩き方を、、

後ろから見てるのが辛くてたまらなかった。

胸がいたかった。


あの時のとても切なかった気持ちを、、

ふとした瞬間に思い出して涙が出るけど、

一生懸命歩いていた夫の姿を

ずっとずっと忘れたくない、

忘れない、

心からそう思う。