5-2 宣言的効果説 | 中国について調べたことを書いています

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1.中国広東省の深セン経済特区の成立過程
2.香港・六七暴動
3.農業生産責任制と一人っ子政策
4.浦東新区から雄安新区へ
5.尖閣問題の解決策を探る
6,台湾は国家か

②宣言的効果説

一方、国家の成立要件として、他国の承認は必要ではないという考え方を宣言的効果説という。他国の承認がなくても、国家として成立しているのであり、承認は「宣言」としての意味しか持たず、国家の成立とは関係がないというのである。

 小島は以下のように言う。

 

「宣言的効果説の立場では或る国家が一定の領域と人民、並びにそれを統治する独立の政治権力を保持するに至れば、或いは実効的な政府が成立するに至れば、それだけの事実で国際法上の国家としての法人格を認められ、或いはその国家の代表者としての地位を認められる。従って外国の承認行為は、右の国家的成立ないし、政府成立という既存の事実とそれから来る法的効果を単に確認する意味しかもたず、仮に承認行為がなくても、右の新国家ないし新政府が国際法上で一定の地位と権利義務を享有していることは否認できない」

小島憲正「国際法上の承認 その1」日本体育大学紀要4号(1974

 

 つまり、国家が事実上存在すれば、その国家は国際法上の拘束を何らかの形で受けざるを得ないので、国際法上の主体として認めざるを得ないというのである。そしてこのことは、他国に意思や行為(つまり承認行為)とは無関係であるというのである。

山本草二は、宣言的効果説は(引用者注:国際法上の権利能力の付与については)その法的効果の相互間での発生・実現を確認する行為にすぎない(法律的行為説)と解する考えに由来するという。(山本草二「国際法」175ページ)

 

 これも整理しておこう。

 この立場は、国家の成立を比較的広義でとらえており、国家として成立したいと考える政治実体に対しては比較的寛大な態度といえる。国民や領土、統治といった客観的な事実や実態を重視しており、実効支配していることを評価するという立場だろう。これは、その政治実体の政治的な意志があり、実体を伴わせることができれば、国家として成り立たせることができるという意味で、政治学よりも法学的な立場の考え方であると言える。

 その背景には、国家は事実上存在すれば国際法上の拘束を受けるのであり、そうであれば他国の意志や承認行為とは無関係に存在しうることになるといった考え方がある。

したがって、民族自立や平等、植民地独立といった考え方になじみやすいと思われる。それは、大国のイデオロギーに左右されることがないということである。