第3章のここまでの議論を整理しておこう。
間違いなく要件を満たしていると思われるものに◎、満たしてはいるが多少の制限が加えられているものに〇、肯定と否定が決められないものに△をつけてみた。
「(4)外交能力」の二つを〇にしたのは、中国の影響で完全に「独立した存在」であるとはいいにくいことと、現実には中国の影響力から完全に脱しきれず、国際組織などへの加入が実現していないことなどから「国際法を遵守する能力」に若干の疑問があるためである。ただ、それが国家の要件を否定するほどの影響力だとは思えないので、限りなく◎に近い〇だと考える。
合法性の原則の「①一方的独立宣言」については検討の対象から外しておいた。
ハーゼルの意見については、さまざまな意味で、台湾の国家としての成立要件を全否定するだけの説得力には欠けると判断した。 そもそも、彼の考え方によれば、1945年から1970年代までの多くの国が台湾の中華民国を国家として承認していた時代も、台湾(つまり中華民国)は国家ではなかったということになる。国家として成立していなかった政治実体を世界各国が承認し、国際連合にも加盟させていたという矛盾した状況が続いていたことになる。これはやはり説得力に欠けると言わざるを得ない。
彼の主張については、このあと4章で検討する。
また、ここまでの検討の結果、台湾が国家か否かを分けるものは、他国の国家承認であるとの考えてもいいように思う。そこで、国家承認をどう考えるべきかを5章以下で検討する。