(2-8)新都市の場所と名前の決定 | 中国について調べたことを書いています

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 2016年3月 中央政治局常委会議が、集中引き受け地の最終案を審議した。(読本p.230)そして、2016年3月24日に中央政治局で「北京市副行政中心と北京の非首都機能の疏解の集中引き受け地に関する状況の報告」(关于北京市行政副中心和疏解北京非首都功能集中承载地有关情况的汇报)が審議され、新都市の場所と名前(雄安新区)に習近平が同意した。(読本p.230)

 なぜこの場所が選ばれたかについては、土地、水利環境、地質などの条件がよく、発展の余地が大きいことのほかに、平原であること、北京・天津と二等辺三角形を形成すること、交通の便がいいこと、生態環境がいいこと、あまり開発されていないこと、人口密度が低いこと、建築物が少ないことなどがあげられている。
大任何以降雄安?集中承接北京非首都功能疏解的首选之地


 なぜ「雄安」という名前になったか、誰がこの名前を提案したかは説明はない。習近平が同意したということであるので、この名前を考えた人は習近平ではないということになる。
 雄県と安新県から一字ずつとったことは明白である。3つの県の名前の「雄」「容」「城」「新」「安」の5つの漢字を組み合わせて名前を作るなら、それほど多くの選択肢はない。宝安県が深圳市になったような驚きはない。
「戦略」(p.44-45)では「雄」の字は雄壮、雄姿、英雄などの言葉が連想され、下から上を仰ぎ見るような強い感じがあり、「安」の字は穏定、牢固、安康といった意味を含むという説明がされている。妥当な名前であるとは感じられるが、容城県の関係者は複雑な気持ちだったのではないだろうか。

 なお、この時に雄安新区の決定とともに、北京市の行政の中心を通州に移すことも審議されている。北京市の行政の中心を移すことについては、すでに2015年に行政副中心に指定されたという記述も見られる。
 ただ、習近平はこの日、雄安と通州が北京の新しい両翼を形成し、京津冀区域の新しい成長の極となるといったことも述べているので、この2つをセットにして審議することに意義があったのかもしれない。

 2016年5月27日の中央政治局会議で「北京市副中心の建設と河北雄安新区の研究設立に関する状況の報告について」《关于规划建设北京城市副中心和研究设立河北雄安新区的有关情况的汇报》という文献が審議された。
。初めて雄安新区の名前が公式文書に乗る。ただし、この段階ではまだ秘密にされた。(読本p.231)
そして、「河北雄安新区の研究設立の実施方案について」(关于研究设立河北雄安新区的实施方案)が承認された。

 この日、習近平は以下のようなことを述べている。

「これは党の十八大の後に中央がつかんだ新区建設である。雄安新区は党中央が批准した首都機能の開拓区であり、上海浦東、広東深センのように全国的な意義があり、この位置づけをしっかり把握しなければならない」

「新しい歴史段階において、この二つの新都市を集中的に建設し、北京発展の新たな骨組みを形成することは、千年の大計であり、国家の大事である」

http://news.sina.com.cn/o/2018-04-01/doc-ifysuurq5167490.shtml
http://finance.sina.com.cn/roll/2017-04-14/doc-ifyeifqx5679874.shtml

 「千年大計、国家大事」という言葉を使ったのは、あるいはこれが初めてかもしれない。

 読本p.67によると、ここで河北雄安新区規画綱要(2018年4月14日承認)の編集作業が開始されたという。同p.254によると、翌日28日午前に河北省委員会が会議をし、具体的な規画編制を開始したという。河北省委員会の王東峰と河北省長の許勤の名前があがっている。
 雄安新区の計画は、中央の計画段階から、河北省の実施段階へ移ったことになる。時期区分も第3期から第4期へと移ってゆく。

 2016年6月から、新区建設準備のため、雄安新区の規画区域内で、家屋などの不動産、規画、土地、プロジェクト、戸籍が凍結されたという。

「雄安新区は新たな住宅政策を制定し、大規模な不動産開発を厳禁する。専門家諮問委員会の専門家によると、国家はここで新たな不動産改革の道を模索し、不動産価格をコントロールし、人々の住宅需要を保障する。
戸籍改革、医療改革、公共サービス改革を行い、行政管理体制の改革を深化させ、大部門制と負のリスト管理を実行し、投融資体制の改革を模索し、対外協力を強化し、貿易の利便化を促進し、国際社会と連動した都市管理規格ルールと体系を確立する。体制体制改革は新区の発展の制度保障になる」
千年大计、国家大事——以习近平同志为核心的党中央决策河北雄安新区规划建设纪实

 

 ただ、この時点ではまだ雄安新区の場所と名前は公にされていなかったはずであり、こうした禁止措置も秘密裏におこなわれたのだろう。

 2016年7月31日~8月6日。京津冀専門家諮問委員(2015年2月から活動している。組長は中国工程院主席団名誉主席の徐匡迪)が、案を検討し完全なものにしたという。

 2016年12月14日~16日に行われた中央経済工作会議で、習近平は引き続き「京津冀協同発展」「一帯一路」「長江経済帯」が三大戦略であることを述べた。(戦略p.63)