名古屋市美術館
『ガウディとサグラダ・ファミリア展』(2023-24年)

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サグラダ・ファミリア聖堂
2022年1月撮影
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名古屋市美術館にてガウディを観てきました。

ガウディファンでもないし、建築にもそれほど知識があるわけではないので、多くの熱心な入場者の後ろから作品をふらふらと眺めて歩いていたという感じでした。そうですね、展覧会のオーバービューを読むような感覚で、ガウディという建築家から何かしらのエッセンスをもらえないか?なんて小狡い気持ちだったわけです。

彼の造形のエッセンスや源泉に、自然物のフォルムや物理的な現象から得たもの、自然の理(ことわり)があるのがとても共感しました。
ゆるく張った糸の弧線から、また、そこに重しを付けた糸を垂らしていくことから生まれるフォルム、平面の一端を持ち上げて立体化させ、それを複合して新しい造形を作り出す。
まるで楕円方程式の世界です。
数理的な探索者。
それが嬉しかったです。


サグラダ・ファミリア聖堂
マリアの塔の星
2022年4月撮影
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ワタシは音楽が好きで、そうしたことに関わりながら生きて来ました。
建築を音楽と比べて感じたことを少しだけ。

建築ってひとつの大きなプロジェクトです。
そこには莫大な資金や資源や人員が投資される前提で成り立つわけです。
それがサグラダ・ファミリアのようなものであれば、建築家だけの思惑よりも、彼を取り巻く人々の想念の方がより巨大になるでしょう。
それに負けない「エゴ」が必要なのではないかと。

音楽も、例えばべートーヴェンやマーラーなど多くの作曲家のエゴというのは素晴らしい作品を創り出しました。
オーケストレーションでホールに居る聴衆者を前に空気で彫刻を刻む。
そしてそこに音の建築を構築する。

ある芸術を表出するためのエネルギーというのは、創作者の中にある怨念にも似たエゴなのではないか?と考えました。
建築家が図面に現す様。
作曲家が譜面に現す様。
図面と譜面に込められたエゴと念。
皆さんはどう考えますか。


サグラダ・ファミリア聖堂内観
2020年撮影
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あとひとつ。
このサグラダ・ファミリアの主任彫刻家は外尾悦郎氏ですが、現場では、ほかにも日本から来ている多くの技術者たちが貢献していることをご存じですか。

実現が不可能と諦められていた造形物が、日本人技術者たちの手で簡単に作り出されています。
サグラダ・ファミリアが近年驚くべきスピードで増築されているのは日本人が持っている技術のおかげなのですが、そういう事実もこの展覧会で少し知らせて欲しかったですね。
日本人は、江戸時代に和算(日本独自の数学論)を確立していて、そのレベルは当時の西欧に負けないもの。また宮大工に受け継がれた技術は、世界的に見ても独特で唯一無二のものですもんね。

皆さんも、ガウディ展をご覧になって色々と感じてみてください。


サグラダ・ファミリア聖堂
完成予想図
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『ガウディとサグラダ・ファミリア展』
(会期中、一部作品に展示替えがあります)
◆2023年12月19日(火)-2024年2月4日(日)【前期】
 2024年2月6日(火)-3月10日(日)【後期】
 名古屋市美術館
(名古屋が最終会場です)


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(名古屋市中区栄2-17-25 白川公園内)

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