名古屋市美術館
『印象派からその先へ―世界に誇る吉野石膏コレクション』(2019年)

風景写真 カメラ1


吉野石膏コレクションが、名古屋に来ました〜音符
内容は、19世紀半ばから20世紀にかけての西洋近代絵画。
しかも、巨匠ぞろいですキラキラ

これまで、所蔵先が「吉野石膏株式会社(山形美術館に寄託)」と記された絵を何度か展覧会で観たことあるけど、
中部地方で、まとめてコレクションが公開されるのは、
これが初めてなんだとか。
(全3章、28作家、展示総数72点)


ではでは、さっそくお気に入りの作品と、
その解説をピンクハート


◆ 1章 : 印象派、誕生 〜革新へと向かう絵画〜

バルビゾン派から印象派、ポスト印象派の画家を紹介しています。


ジャン=フランソワ・ミレー
《群れを連れ帰る羊飼い》
キャンバスに油彩、パステル、インク、黒コンテ
1860-65年 46.5×56
吉野石膏コレクション
風景写真 レンズ1

今回のイチ押し〜〜キラキラ
ミレーの作品は、黄昏時の情景を描いたものが好きですラブ


アルフレッド・シスレー
《モレのポプラ並木》
キャンバスに油彩 1888年 54×73
吉野石膏コレクション
風景写真 レンズ2

細かい筆跡を重ねるようにして、ポプラの並木が描かれています。
少し離れて見ると、木の葉が風に揺れているように見えます。
シスレーとモネ、ルノワールは、絵を学び始めた頃からの友人でした。
彼らは、アトリエの外に出て太陽の下で描くことを、ともに学びました。



クロード・モネ
《サン=ジェルマンの森の中で》
キャンバスに油彩 1882年 81×65
吉野石膏コレクション
風景写真 レンズ3

森林の奥へと続く道が描かれています。
消失点へ向かう小さな光の輪は、降り注ぐ光と陰のコントラストを成しています。
画面全体に散りばめられた赤、ピンク、黄や緑といった色彩が様々な階調で、細かな筆致で描かれており、陽光の差す森の中に幻想的な雰囲気をもたらしています。



クロード・モネ
《睡蓮》
キャンバスに油彩 1906年 81×92
吉野石膏コレクション
風景写真 レンズ4

1890年代の《睡蓮》は至近距離から描かれましたが、
1900年代に入ると画面が縦方向に伸びて正方形に近くなり、遠近感をもち、水面を広く捉えた作品が増えていきます。



ピエール=オーギュスト・ルノワール
《庭で犬を膝にのせて読書する少女》
キャンバスに油彩 1874年 61×48.5
吉野石膏コレクション
風景写真 レンズ5


ピエール=オーギュスト・ルノワール
《シュザンヌ・アダン嬢の肖像》
紙にパステル 1887年 61×49.2
吉野石膏コレクション
風景写真 レンズ6

ルノワールはプロのモデルを雇うよりも、日常的に親しみのある人物をモデルにすることを重要視していました。
10歳で本作のモデルを務めたシュザンヌ・アダン嬢は、ブーローニュ出身の銀行家イポリットの四女です。
青い服を身に着け正面を向き微笑む少女の、幼さを残しつつ大人へと変貌する様子が、パステル特有の柔らかな筆致で捉えられています。



エドガー・ドガ
《踊り子たち(ピンクと緑)》
紙にパステル 1894年 70.9×49
吉野石膏コレクション
風景写真 レンズ7

ドガは舞台上の主役に限らず、舞台袖や練習室などの踊り子にも目を向け、油彩やパステルなどの技法で色鮮やかに描き出しました。
本作ではチュチュに真上から当たる照明の反射が、一筋のスポットライトとして表現されています。
ふたりの踊り子の姿は背中から捉えられ、多くの類型表現や習作からドガがこのポーズに固執していたことがわかります。
画面右手の踊り子は左の掌を相方の顔に向けており、演目中の緊張感が伝わってきます。
ふたりは今まさに出番待ちをしている演者で、舞台袖から躍り出る瞬間をじりじりと待ち構えているのです。


ルノワール&ドガ。
パステル画も見応え十分!ですよグッ


フィンセント・ファン・ゴッホ
《雪原で薪を運ぶ人々》
キャンバス(板に貼付)に油彩
1884年 67×126
吉野石膏コレクション
風景写真 レンズ8

オランダの金細工職人から注文を受けて制作した6点組の装飾画の1点。
農民の一家が薪を背負って雪原を行く姿を描いています。
この作品の準備段階のスケッチでは、薪を積んだ牛車と農夫が描かれていましたが、油彩では、家畜を使うことができない、より貧しい農民の姿に変更されています。
鉛色の空には、赤々とした夕日が沈んでいきます。
太陽はファン・ゴッホにとって重要なモチーフで、教会などの宗教的モチーフに代わるものとして、特にアルル時代の作品によく登場します。
本作はオランダ時代に太陽を描いた希少な作例です。



フィンセント・ファン・ゴッホ
《静物、白い花瓶のバラ》
キャンバスに油彩 1886年 37×25.5
吉野石膏コレクション
風景写真 レンズ9


今回、展示総数の半分(36点)が、この章にあります。
コロー、クールベ、マネ、ブーダン、ピサロ、カサット、セザンヌの作品も楽しめます音符


◆ 2章 : フォーヴから抽象へ 〜モダン・アートの諸相〜

フォーヴィスム、キュビスム、抽象絵画を紹介しています。


モーリス・ド・ヴラマンク
《大きな花瓶の花》
キャンバスに油彩
1905-06年 104.3×52.5
吉野石膏コレクション
風景写真 レンズ10

風景画とならんで静物画は、ヴラマンクにとって重要なジャンルでした。
ここでは非常に縦長の画面いっぱいに、花瓶に活けられた花が描かれています。
原色が大胆かつ効果的に用いられ、色彩自体が自律するような豊かさで満たされた表現は、この時代のヴラマンクに特徴的です。
黒く引かれたモチーフの輪郭線からはみ出そうな勢いのある筆づかいは、花の持つエネルギッシュな生命感を表すのに貢献しています。



アンリ・マティス
《緑と白のストライプのブラウスを着た読書する若い女》
キャンバスに油彩 1924年 55×38.5
吉野石膏コレクション
風景写真 レンズ1

マティスが初めて南仏ニースを訪れたのは1917年、48歳の時のことで、以後南仏とパリ近郊を行き来しながら制作を続けました。
それまでの実験的で緊張感に満ちた作品から、光と色の戯れに優しく身を任せる、快楽主義的ともいえるニース時代が始まります。
読書に没頭する若い女性は、おそらくこの時期のマティス作品の大半でモデルを務めたアンリエット。
空間の奥行きや人物のボリュームが復活した古典的ともいえる表現と、鮮やかな色彩による装飾性が見事に調和しています。



アンリ・マティス
《静物、花とコーヒーカップ》
キャンバスに油彩 1924年 61.6×50.8
吉野石膏コレクション
風景写真 レンズ2


アンリ・ルソー
《工場のある町》
キャンバスに油彩 1905年 46×55
吉野石膏コレクション
風景写真 レンズ3

1889年のパリ万国博覧会に感銘を受けたルソーは、最新の技術で建てられたエッフェル塔を自画像の背景に描きました。
さらに飛行機、飛行船、気球など新時代のシンボルを積極的に画題に取り入れます。
本作で描かれている工場もまた、ルソーにとって、新しい文明の到来を告げるものでした。
中央に煙をたなびかせた煙突が見えますが、不思議なことに、その工場の姿はほとんど木立に隠されています。
放射線状に伸びた道に点在する人物は、遠近法から予測できるよりもかなり小さく描かれ、風景は雄大さを感じさせるものとなっています。


このほか、ルオー、ボナール、マルケ、ブラック、ピカソ、ミロ、カンディンスキーの作品がありますニコニコ


◆ 3章 : エコール・ド・パリ 〜前衛と伝統のはざまで〜

こちらは、一章まるまるエコール・ド・パリ。


モーリス・ユトリロ
《モンマルトルのミュレ通り》
厚紙に油彩 1911年頃 81×60
吉野石膏コレクション
風景写真 レンズ4

細い路地のむこうにサクレ=クール寺院を望むモンマルトルの街並みは、ひっそりとした趣です。
この作品を制作した1911年頃は、のちに「白の時代」と呼ばれるユトリロの画業における最盛期。
本作でも、灰色やベージュなどの絶妙なニュアンスをもつ色彩で、歴史ある石造りの質感やどんよりとしたパリの空を見事に表現しています。
本作が、ユトリロがしばしばおこなったように、絵葉書の写真を見ながらアトリエで制作したものかどうかは定かではありませんが、一点透視図法で奥行きを強調した構図は、カメラによって切り取られた二次元の景色をもとに描いたことによるのかもしれません。



マルク・シャガール
《逆さ世界のヴァイオリン弾き》
キャンバスに油彩 1929年 92.7×73
吉野石膏コレクション
風景写真 レンズ5

逆さまなのは世界? それともヴァイオリン弾き?
シャガールの作品では天地が逆転することがよくあります。
固定概念を打ち破れ。絵画の世界ではどんな不思議も可能だ。
そうシャガールは私たちに語りかけているようです。
宗教的な役割も担うヴァイオリン弾きは、ユダヤ人の冠婚葬祭には欠かせない存在で、早くからシャガールの画面に登場しています。
深みのある美しい色彩の背後から、哀愁に満ちた音色が今にも聞こえてきそうです。



マルク・シャガール
《恋人たちと花束》
キャンバスに油彩、テンペラ
1935-36年 55×38
吉野石膏コレクション
風景写真 レンズ6


今回、シャガールの絵が一番多くて10点来ています。
ほかに、ローランサン、ヴァン・ドンゲン、キスリングの作品がありますよピンクハート


どの章も、
巨匠たちの「そうそう、この筆致!」な絵がそろっていて、
とてもわかりやすく楽しめる内容になってます。
初めて展覧会を観た頃の気持ちが、ほんわかとよみがえりました〜照れ


『印象派からその先へ―世界に誇る吉野石膏コレクション』
◆2019年4月9日(火)-5月26日(日)
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