【一枚の絵・46】

名古屋市美術館
『スペイン・リアリズムの美 静物画の世界』(1992年)より
作者不詳
《書物》
キャンバスに油彩
17世紀 35×55



この展覧会は、16世紀から19世紀までのスペインの静物画の歴史をたどるものです。

静物画とは、花、果物、魚、狩りの獲物、書物、楽器など、日常生活で見られる題材を描いた絵のこと。
当時の芸術観の中には絵画の主題の階層付けがあり、静物画は宗教画、歴史画、肖像画にくらべて多分に蔑視されていたジャンルでした。
15世紀、ネーデルランド地方でリアリズム(写実主義)への関心が高まって、宗教画の中にも家具や食器、果物や花が描きこまれるようになり、さらに16世紀になって、人間が人間以外のものに価値を置きはじめ、その中にも生命が宿っているという思想が生まれたのでした…。

とまあ、前置きが長ーくなってしまったけれども、今回の「一枚の絵」は、この《書物》です。
相当読み込まれた本の上に、ちょこんと乗った砂時計。
この砂時計は、「世俗のむなしさ」を表す寓意であるって話を聞いたことがあるのだけど…。
リアリズム絵画が並ぶなかで、ダントツに立体感あふれる作品でした!
まさに「飛び出す絵本」ね。
(1992年5月)


『スペイン・リアリズムの美 静物画の世界』
◆1992年4月21日(火)-5月31日(日)
 名古屋市美術館
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(名古屋市中区栄2-17-25 白川公園内)


【2012年・追記】
そのほかの展示作品ですキラキラ

エル・グレコ
《聖家族と聖アンナ》
キャンバスに油彩 1580-83年 178×105
サンタ・クルス美術館

「宗教画の中の静物」ってことで、
幼児聖ヨハネが果物の入った器を持ってます。
「イエスの受難」を表すザクロと
「贖罪」「救済」を表すリンゴ(?)でしょうかりんご


フアン・サンチェス・コターン
《食用アザミのある静物》
キャンバスに油彩 63×85


ベニート・エスピノース
《オレンジの枝》
キャンバスに油彩 42×29


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