さて、彌生は母とY県で母と同居を決めたが
 父には一切言っていなかった…
 あまりにもムカつく事が多くて
 2年くらいは電話すらしなかった…


 母との同居を決めて
 吉祥寺のマンションで荷物を纏めていると
 電話が鳴った…
 「はい…」「俺だ…」と父だった…
 「どうしたの?」と言ったら


 何でも入院する事になったから
 保証人になって欲しいという…
 今まで何回も入院していたのに
 保証人になってくれと言われたのは
 初めてだった…


 彌生は娘はおんぶして
 息子は自転車の前に乗せて
 父のアパートに行った…
 父はかなり痩せていた……


 保証人の欄にハンコを押しながら
 「…私、引っ越しするから」と言ってやった…
 「えっ!」とかなり驚いたようだった…
 「お母さんと暮らす事にしたから…」
  とも言ってやった…


 奥さんも「えっ!彌生ちゃん家を買うお金
 あったの!」と言うから「頭金は双方の親が出して
 くれる事になったから…」と言った…
 「入院の日が決まったら連絡してください」
 と言ってその日は帰った…


 しかし、2週間待っても何の連絡もない…
 彌生も引っ越しの日が近づいていた…
 なので、何故公衆電話から電話したのか
 記憶にないのだが、彌生は公衆電話から父に電話した


 「もしもし?」「あら、彌生ちゃん」と
 奥さんが出た…
 「その後どうなりましたか?」
 「入院はまだなんですか?」と聞いたら
 鼻先で「フン!」と笑い
 「とっくに入院しているわよ!」と言われた


  さすがにムカついたので
 「あの!入院しから必ず知らせると
  言ってましたよね!どうなってるんですか!」
 と言ってやった!!!本当に頭に来ていた!!!


 奥さんもカチンと来たらしく
 「あのね、パパは彌生ちゃんは本当に
 人情の無い不誠実な娘だっていつも言って
 いるわよ!!!」と喚き散らした!!!
 「ずいぶんと興奮しているみたいですね、
 電話切ります!」とガチャンと電話を切ってやった!


 彌生はその足で父の入院している
 病院にタクシーで向かった…
 以前はJ医大の特別室に入院しついたが
 今回は地元の○赤病院だ……


 病院に着いてナースセンターに
 駆けつけて父の病室を教えてもらった
 もう時間外なので夜だったが
 特別に許可してくれた……


 今回は大部屋だった…
 父は相当カネに困っているのが
 すぐにわかった……


 父は一番奥のベッドにいた…
 他の人たちはもうみんなカーテンを
 閉めていた……
 父はあきらかに「死相」が出ていた……
 彌生は瞬時に「この入院が最後になるな」
 と悟った……


 「おとうさん、なんで入院したこと知らせて
 くれなかったの?」
 「奥さんに言われたよ、いつも彌生の事
  不人情な娘だと言っているんだって?」
 「彌生はそんなに人情が無い人間なのかな?」
  と涙が止まらなかった……


 父は涙ぐみながら
 「俺が死んでも墓は作ってある…」
 「そこに入れてくれ…」と言った……
 「なんでお父さんの奥さんにあんな言われ方
 しなきゃならないのかな?私は許せないよ」
 と言ったら、泣きながら「頼む、あいつとは
 争いはしないでくれ!争い事はたくさんだ!」
 と懇願された………


 私が父の「本心」を聞いたのは
 これが最後だったと思う……