ううん,ごめん。
彼女の告白から半年が経って返した返事に,
僕はあっさり振られてしまった。

何でなの。
彼女のアプローチは告白から何ヶ月か続いたのだけど,
しばらくは全然だった。

3ヵ月,待つことにしたの。
でももう過ぎたでしょ。
彼女の告白が
何か懸賞に外れたみたいな感じに見えて,
僕は苦しくなった。

他に好きな人がいるの?
ううん,違うよ。


彼女とはそれっきり会話が終わってしまい,
僕たちは別れて帰るしかなかった。

これからのことを考えてみた。
このまま彼女を好きでいるかどうか。
振り向いてくれるか分からない未来を考えて,
それからようやく彼女の期限の意味を理解した。
理解はしたけれど,
あとには淋しい冬の帰路が残っていた。
和貴が結婚した。3つ上の会社の同僚とだそうだ。

結婚式には行かなかった。行ってもしょうがない。
代わりに,結婚祝を送ってあげた。和貴の好きな,あの店のバウムクーヘン。

電話でお礼の返事が来た。
「ありがとう」
「いえいえ。いま,幸せ?」
「うん。半年後には,家族も増えるし」
変わらない和貴の声。
でも少し遠く聞こえる。

電話を切った。
お正月には
和貴の写真つきのはがきが来るかもしれない。
3人で笑っているかもしれない。

私は 部屋でひとり目を閉じた。和貴の残した時計が,今も時を刻む。