母子手帳のことです


アオイの小学校の友達ミカが入院してくる

ミカは、再婚した母や家族に酷い扱いを受けて養護施設で育ち、

赤ちゃんの父親もいない状況


小学生の時から、自分が生まれた時の母子手帳を心の支えにして生きている

そこには世界で一番自分を愛してくれている母の言葉があるから


一方アオイは、その小さな手帳を開く事が出来ない

ずっと母に嫌われていると思っているから


アオイは小さい頃から

何かに夢中になると他の事を考えられなくなったり、

衝動的な行動が多かったりして、

お母さんに「あなたはおかしい、ちゃんとしなさい」と怒られ

お母さんは学校から注意されたり


そして、アオイが中学生?の頃

「注意欠陥多動性障害」の可能性がある、とわかる

お医者さんに

「アオイさんがおかしいとか、お母さんの育て方が悪い、といったことではない」

と言われる


アオイは

「母親というだけで」

私のせいで、この人はどれだけ苦労をしてきたんだろうと思う


お産で奥さんが亡くなって一人赤ちゃんを育てている若いパパが

「この子が一番大切で頑張ってるのに、イライラしてこの子にイヤな思いをさせているのはおかしい

だから、頑張らない」と言うのを聞いたアオイのお母さんは

「笑っていれば良かったのよね」

とつぶやく


女の子を出産したミカは、

赤ちゃんを抱きながら

手帳に今の気持ちをいっぱい書き込む

「今の気持ちを残しておきたいの、いつか私も忘れてしまうかもしれないから」


アオイは小さな手帳を開く

アオイのモノローグ


「小さな手帳は愛で溢れていた

でもその純粋な愛はずっと続くとは限らない

傷ついたり歪んだりして形が変わってしまうことがある

ただ、ほんの一瞬でも世界中の誰よりも愛されていたという証があれば、私達は生きていける

そしていつか誰かを愛せるような気がする」


ほんの一瞬・・・

はやっぱり悲しいな、

と思ってしまった


私は、母子手帳には何も書かなかったよなぁ、と思いながら

手帳を探す

やっぱり書いてなかった


でも、ノートに育児日記を結構しっかり書いてた

当然、上の娘の方が圧倒的に量が多い

実家にいたので、二人目の時は忙しくて書けないということではなかったと思う


が、数年前処分した


私が死んだ後、誰かの目に触れるのはやだな、と思ってしまった


とりあえず、大きく傷ついたり歪んだりはせずにここまで来た気がするから、まぁいっか


でも、何書いたか覚えてない

寂しい気もするが

読まれたくない、気持ちが強かった、らしい