[少林寺 達磨大師: 言語録⑦] 衣鉢伝授 | かいぞうのブログ

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  達磨晩年のある日、千聖寺において
  弟子を集めて自分の継承者を選ぶ為の問答を行った。

 



達磨そろそろわしはインドへ帰ろうと思う。
   そこで、そなた達が何を学んだかを聞かせてもらおう。

僧A「経文とは、とらわれるべきものではない。

   しかし離れ過ぎてもいけない」
達磨そなたは わしの“皮”を得た。
僧B「たとへそれがどんなに美しいものでも、更に求めようとする

       執着の心を、私は捨て去ることができました。」
達磨そなたは高い境地に達した。だが“肉”に過ぎない。
僧C「地水火風 全ては空(くう)。

   肉体の五感も実体のないものに過ぎなく、得るべき法は無い。」
達磨そなたは わしの“骨”まで得た。

 

 

  しばらくの沈黙の後、達磨は慧可に視線を向けた。

達磨慧可、そなたはどうだ?

  すると慧可は、少し視線を地に落とした後、静かに立ち上がり、
  達磨の足元へ歩み寄ると、正座し、達磨に無言で三礼し、

  元の座へ戻る。

  他の弟子たちは意外な表情で顔を見合わせた。

達磨そなたは わしの“髄”を得たようだな。
                                                              
  達磨は満足気な表情で慧可を見る。

僧B『……知る者は語らず、語る者は知らぬもの…か…』(心中で呟く)

  達磨は、手元に置いてあった衣鉢を手に取ると、

  慧可の前へ歩み寄り、



達磨慧可、教えを伝えた印として、そなたに衣鉢を授ける。
   そなたが禅宗の二祖だ。
   わしの死後200年、六祖の時代で継承者は絶える。
   その頃には禅の教えは国中に広まっているであろう。
   しかし、禅を実践する者は減る。真に理解する者が減るからだ。
   だが、迷いのある者を見捨ててはならない。

   正しい道へ導いてやるのだ。
   わしは迷える民を救い導くため中国へ来た。
   教えの花は開いたようだ。目的は成就した。

 

 

                  [ 完 ]