スタッフよりレポートです!

19日の上演後、熱気冷めやらぬ中、
シアター・トークが行われました!!

 

 

出演:南 果歩、小久保寿人さん 演出家 瀬戸山美咲さん
司会:中井美穂さん


―瀬戸山さんと演劇との関わりをお話ください。

瀬戸山さん「ミナモザという自分の劇団を持っていて、作風として今回の作品は繋がるところが多く、社会で起きた出来事をどう受け止めていくか
ということを取材し作品にしたものが多い、地域の方と演劇をつくるということもやっています。」

―戯曲『あの出来事』との出会い、どうしてこれを選択されたのですか?

瀬戸山さん「このシリーズの”ことぜん”個と全体というテーマが決まっていたところ、翻訳を担当されエジンバラの演劇祭で本作を観ていてた谷岡健彦さんが、推薦してくれました。この作品の合唱団は、上演ツアー先の地域の合唱団ということも面白く、取り寄せて読んだらすごく良かった。
ウトヤ島で起きた銃の乱射事件は知っていて、それが基になる作品だと身構えて読んでたんですが、事件そのものを書いているというより、
クレアの魂の旅、どうやって人は受容していくかが書かれていて
途中で極限までいって一回殺したいほど憎むということで納得がいって、
本当に許すということは簡単なことではないということに辿りついていて、この戯曲が信頼できそうだなと思いました。
また、少年とその他の役を一人の人間が演じるということ。
そして合唱団、今回、東京で初公演するにあたって改めて合唱団をつくろうと、楽譜が読めるという条件で応募したところ、
20代から70代までのプロアマ含め200人の応募がありました。
そして作者のデヴィッド・グレッグさんがギリシア悲劇を意識されていて、社会に何か大きな出来事があったとき、それについて、
劇場という公共の場で集まってどう考えるか・・・受け止める存在として、ギリシア悲劇のコロスと同じような位置で合唱団が置かれています。
舞台では、実際に起きたことなのか、クレアの頭の中のことなのか、起きたことを思いだしているのか、色んな見方が出来ると思います。」

―役者のお二人からご挨拶をお願いします。

クローバー果歩さん「こんにちは 先程まで舞台に立ってましたが!
今日はお忙しい中、ありがとうございます。この戯曲はとても面白くて、一読して演劇的だなと魅了されました。
皆様の心に届いていれば嬉しいです。」

小久保さん「初日が開くんだろうかと不安な中、やっていたんですが、こうして大勢のみなさんに観ていただけて感無量です。」

―台本はいつ渡されましたか?

クローバー果歩さん「春頃です。日本初演なので、まず、谷岡先生が立ち会って8月の3日間くらい、ワークショップがありました。
読みながら、じゃ、この訳をこうしようああしようと。色々試す時間がありました。」

―二人で作り上げていく舞台、お互いの相性が重要ではなかったですか?

小久保さん「大先輩の南果歩さんがどんなボール投げても受け止めてくれると言う安心感があったので、
稽古からぶつけていこうという意気込みでやっていました。」

クローバー果歩さん「二人芝居は三回目なんです。一人芝居、二人芝居やって、三人芝居、四人芝居もやってます。
少ない人数だと、演劇的なワープがすごくあって時空を飛ぶというか、
今回の戯曲、私、クレア一人だけをやってるんですが、小久保さんの場合は犯人の少年をやったり、精神科医やったり、すごく沢山の顔をもたなきゃいけない、でも人間の顔はどこか通じてるところがあったり、色んな多面的な見方ができて、演劇的な遊びがふんだんに盛り込まれています。
二人芝居って辛いものなんですよ。でも、のど元過ぎれば熱さ忘れて、それを三度やっているって私は相当忘れっぽいんだと思います。
今回はスリル満点です。小久保さんはしっかりしててセリフ飛ばしたりしないんですが、私は作文してしまうことがあって、
それもライブだと思って頂ければと思います。小久保さんはしっかりしていて頼りになります。頭が上がりません。」

―今回、日本語と英語の字幕が出てるのも珍しいですよね。

瀬戸山さん「これは役者の方に嫌がられて仕方ないと思ったんですが、字幕をつけるということは、この作品は特に、いつでも誰でも来られる開かれた場所にしたいとというのが一番にあって、皆さんのご協力をいただきました。役者さんは字幕が出てるから一言一句間違えられないので大変だと思うんですけど、あることによってこの作品のテーマと重なることがあるので演出効果に見えたと言う感想もいただいてます。」

―普段から私たちそんなに戯曲を読むことがないですが、こういう風に書かれていると、情報としてわかりました。でも役者の方は大変!

クローバー果歩さん「答え合わせです(会場爆笑)
だから敵でした!最初は!敵だったんだけれども、
幕が開いてしまったら全然気にならない。ライブはここで繰り広げられていて、プラスアルファととらえるようになりました。」

ー小久保さんはさいたまエクスとシアター出身で、ずっと厳しいと有名な蜷川さんの薫陶を受けていたんですよね。

小久保さん「今回の芝居はその厳しさを超えましたね。役名が精神表示で全部で11役、
どうやってつくっていけばいいんだろうと。稽古前にカトリオーナ役の為、様々な映画などをみてやってみると、
瀬戸山さんにそういう演劇じゃないからやらないでと(笑)」

瀬戸山さん「外側からつくっても仕方ないというのまずあって、一人の人間の中に多面性があることも示されてるので、鮮やかに演じ分けるのはそこで終わっちゃう気がして、内面をとにかく掘り下げていって、クレアとの関係性の中で、お客様に判断してもらえるといいなと。」

―クレアの極限状態については?

クローバー果歩さん「隣にいた人が突然撃たれ、亡くなり、パニックの渦中にいて、そこからもう一度人生をリスタートなんてできるのだろうか、
想像するだけで、心が元通りになるとは思わないんですが、でもそこから先のストーリーの方が長い。人生は長い。
そういうことを乗り越えると言う言葉は簡単に使えないと思うんですけど、そういうことを経験した後の人生、
またどうところから歩んでいくかっていうところがクレアのテーマ。
今回、”許す”ということがキーワードでしたね。
襲撃事件を犯した人物と対峙した時に、最後の最後に許すという心が少しでも、ほんの少しでも憎悪よりも勝る。
薄皮一枚の差で勝っていたとしたら、その人間性を保てる、憎しみを憎しみで制すは一番悪の循環に繋がっていく。
この戯曲は色んなテーマが織り込まれていてクレアをやりながら、日によって、せめぎ合っていくものが日々変わるので、
とても深くそして厳しい戯曲で、毎日生々しい感じです。」

―11月13日に幕が開いて、今日まで心の揺れ方が違うんですか?

クローバー果歩さん「違いますね。その日の天気もそうだし、お客様の空気もそうだし、相手役の出方もそうだし、コーラス隊の歌声にも、そして何か劇場から離れて誰かと交わす会話の中、色んなものに影響を受けて、翌日の舞台が変わる。こんなに繊細に心を使う戯曲なんだな毎日痛感してますね」


〈お客様から質問〉

お客様「役と自分との近さとは?違いとは?」

クローバー果歩さん「全然違います。自分とは違う人間を演じたい為にお芝居をしてるので。
役を通して経験できることで、自分の人生が豊かになっているっていうのは、これはこの仕事の特権だと思います。
善人、悪人ということではなく、自分の思考回路や身体で感じられることだと限りがあるんですけれども、
私がクレアだったら、私が誰々だったらということでは、無限の可能性出てくるというところでは、常に距離があります。」

小久保さん「自分が11役やって、自分自身一番共感できるのはカトリオ―ナかなと。
きっとカトリオーナと同じようなことを言うだろうし近いと思います。」

お客様「何回か観たのですが、クレアに話しかけるコーラス隊の方が日によって違っていますね?」

瀬戸山さん「新選さが大事なお芝居で、お客様含めてこれをどう受け止めるか、完成させないところをちょっと残しています。
即興のところは日替わりになっています。」

―合唱団の関わり、関係性がすごく面白いですね」

クローバー果歩さん「稽古場でもね、二人だけの時と合唱隊が参加の日って、ガラッと空気が変わるんです。
やっぱり人の力、熱量、二人芝居であって、二人芝居じゃない。
コーラス隊のみなさんは自前の衣装なんです。地元の合唱団をつかうというのが戯曲にあるんです」

瀬戸山さん「合唱団の一曲目は持ち歌を歌うと戯曲にあって。曲名が決まっておらず、
今回グリーンスリーブスを歌ったんですけど、これはみんなで多数決しました」
クローバー果歩さん「米津さんのLemonを歌いたいという意見もあったんですよ(笑)」

―今回の役を演じるにあたって細心の注意を払ってるところはどんなところですか? 
皆様にメッセージをお願いします。

クローバー果歩さん「みなさんご覧になってわかると思うんですけれど、舞台装置がとってもシンプルですし、合唱団のみなさんも自前の衣装ですし。
もちろん本番前にウォーミングアップしたり、諸準備あるんですけれど・・・。
今回の舞台に関しては、舞台に立つときは丸腰。何も持ち込まない。本当に生身。
服は着てますけど。本当に生身の裸の私が存在する所からスタートを切ってます。
100分のお芝居で、スタートしたら一度も袖に引っ込まないので、ここで生きることしか、この戯曲には太刀打ちできない。
何回も観てくださっている方いらっしゃるみたいなので、その日によって印象や、後味が変わっていると思います。
それも演劇の面白さとして捉えて頂けたらいいなと思っています。」

小久保さん「目の前の今日の果歩さんと生のやりとりをするという、ある種の開き直りというかそういう気持ちでやっています。」

クローバー果歩さん「演劇って手間暇がかかるものです。今、何でもググったら答えが出るし、そこに行かなくても知った気になるんですけれども、
超アナログな世界に皆様、本当にようこそ足を運んでくださりありがとうございます。
劇場で観たものって打ち上げ花火みたいなもので、一瞬脳裏に焼き付く、最後は心の奥底に残る。
やっぱり人の心に残るものって、私は信じてます。
その記憶が薄らいだとしても、あの時、あのセリフ、あの空間、人間が持っている五感を使った心に残るものが一番豊かじゃないかなと思ってます。
みなさんとそういう時間を共有できて幸せです。
また劇場に足を運んでください。ありがとうございました!」


残り8回雷
日々新鮮に変わるこの舞台「あの出来事
お客様と演者、スタッフ、同じ場所に集まって、
二度とない瞬間を共有することが、”出来事”にニコニコ

どうぞ劇場に足をお運びくださいませキラキラ

 

 

 

舞台「あの出来事
作:デイヴィッド・グレッグ
翻訳:谷岡健彦
演出:瀬戸山美咲
出演:南 果歩 小久保寿人 『あの出来事』合唱団
会場:新国立劇場 小劇場
上演期間:11月13日(水)~26日(火)  

 

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インタビュー

婦人画報 12月号」ハースト婦人画報社  

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by あゆん