One-shot*memory



季節の一枚の葉が隣の葉とは
まるで違うように
同じ樹に宿された旬な葉でさえも
繰り返される季節時計の
向こう側で全てが変わる


一年後の旬な葉は同じ時を
繰り返すことはない
同じ樹に宿された葉ですら
全ての色が違うように


人の生きる人生すら
まるで違うように
その、あなたの傍らにあるもの

その、あなたの傍らにいる人が
必ず、あなたと同じ心を持つとは
かぎらないもの


絶対的なものなどありはしない
あなたの真後ろに、前に
その人はいると思いたいだけ

それらを認めたくないのが
あなたのプライドだろう


そこには誰もがあるはずの
価値観の違いがある


人が正直に生きるということは
他の人にも嘘をつかないで
さらに、その人自身にも嘘をつかず
正直に生きるということさ

その人自身に嘘をつかずとも
他の人に嘘をついていたら
正直に生きることにはならない


桜の木は言うだろう
人間としての言葉がないだけ
嘘などはありえないことさ、とね


隣に立つ桜の木はもう
冬の準備をしている
どうしたのだろう


この桜の木はまだ深い秋色のまま
同じ散歩道であるのに

紅く染まる桜葉は燃ゆる色で
私を見つめている
なんと、紅い燃ゆる色を放つのか
そこに桜の心が染まるように


隣に立つ桜の木は冬に入って
全ての葉を大地に眠らせて
枯れ木のまま
静かに寝静まっている


秘かに桜の木は
人には聞こえない声で言うだろう
それぞれに

12月は冬の季節時計なんだと。
12月は、冬に入る準備をするためにあるのさ。


人のいない世界の片隅で
隣の木に聞こえないように
呟いていることだろう


今という瞬間を艶やかに生きて
今という大切な瞬間のために
ひたすら楽しく華やかに
全てが終わるまで日々を過ごすのか

今という瞬間を大切にしながら
明日は繋がるという1日のために
地上の片隅で今を我慢して待ち
静かな季節時計を過ごすのか


どちらとて   それぞれの道だろう
価値観の違いがあるだけ

しかし、その価値観の違いが
時には人生を大きく左右する


だって、人生そのもの全てが
One-shot*memory だからさ


しかし、その価値観の違いが
時には人生を大きく左右する


何故なら、いつか
人生にまわりまわり
巡り来るものがある

その人自身がしたことの
全てが周りくることだろう


それぞれに、いつか
それは幸か不幸か
どちらにしても
未来を変えるのは今の一瞬さ


それを知るからさ、桜の木はね
だって、人間と同じ価値観は
持たないからさ



そうさ、人生そのものが
One-shot*memory だからさ


この世にある全てのものが
One-shot*memory


この世にある全てのものが
同じものを持たない
一回限りのOne-shot*memory


一回限りの記憶、記憶容量
一回限りのOne-shot*memory


だからこそ、人生そのものが
One-shot*memory なのさ



詩 ♦︎ One-shot*memory ♦︎


桜の木よ
今という瞬間の
One-shot*memory
それを見せてくれたのだね


冬に入るのを少し遅らせたのかい
そんな、穏やかに
ゆっくりと生きている君の
燃ゆる心が好きだよ


あゝ   君らは
なんと燃ゆる心を持つのか


私はね
この地上の片隅で秘かに
ひっそりと君らの燃ゆる心を
見ているだけで幸せなのさ


私はね
それ以上は
何も望んではいないのさ

そんな小さな君らの
One-shot*memory


そんな君らの
One-shot*memory






One-shot*memory

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【 水の琴/One-shot*memory 】
詩人/鏡乃 琴禰
【 別名/樹霧《 きぎり 》】






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