金星の謎-超暴風 | 神楽坂Mine

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金星(上の画像)と地球は一見非常によく似ています。半径や組成、密度も似ていて、重力も大体同じで、公転周期も大きな違いがありません。そのため兄弟星とも呼ばれますが、環境的には天国と地獄ほどの違いがあります。


金星の地表面の温度は鉛が溶ける460度!気圧は92気圧!二酸化炭素が主成分の大気に濃硫酸!の雲が浮かんでいます。そして磁場がないので、生命にとっては致命傷となる、宇宙線・放射線がダイレクトに地表に降り注いでいます(永年被ばく状態)。


太陽放射量は太陽に近い金星では、当然の事として地球より多く、約2倍になります。ところが、太陽光の反射率が、地球が約30%に対して、金星は約78%、つまり三分の二以上が反射してしまう為、太陽から受け取る熱量は、金星の方が地球より小さいのです。しかし、ぶ厚い大気の二酸化炭素の温室効果により、超高温の気温になりました。 

そして自転周期が全く違い、金星は自転に-243日かかります(マイナスは自転の方向が地球と逆のため)。つまり日の出から次の日の出まで(1太陽日)は、約117日です。そこで、地球では考えられない謎の気象現象が、金星で起きている事が発見されています。

金星では星全体で超暴風「スーパーローテーション」が、吹いていたのです。この風は自転の方向に、自転より速く吹いています。高度60kmでは風速は秒速100mに達しており、地球レベルではスーパー台風や竜巻レベルの風が、星全体で吹いていたのです。

この風速は、金星の自転速度の60倍にも達します。地球の常識では、星全体に通常吹いている風は自転によって起こされ、当然自転速度より遅く、地球の場合の偏西風(秒速30m)は、地球の自転速度の十分の一以下です。

大気には粘性があり、地面との間で摩擦が働くので、特別なしくみが働かない限り、このような風の分布は徐々に平均化されてしまい、 最終的には自転速度以下の風速に落ち着くはずでが、金星では風速が落ちるどころか、速くなっている観測記録もあるようです。

そしてスーパーローテーションは、土星の衛星タイタンでも生じていることが探査衛星の観測から分かってきました。 タイタンは1.5気圧の窒素の大気を持ち、金星と違って極寒の世界ですが、周期16日の自転の10倍の速さの風が上空では吹いているようです。


スーパーローテーションは、発見から40年ほど経ちますが、システムの完全な解明には、まだ至ってないそうです。もしかしたら、宇宙全体で見ればスーパーローテーションは、ありふれた大気循環の一つなのかもしれませんが・・・