猫の恩返し(2) | 伊勢奇譚物語~神様のオフ会~

伊勢奇譚物語~神様のオフ会~

三重県の占い師、神楽~kagura~が綴るオリジナルブログです。


こんにちは、神楽です(*^.^*)


さっそく、前回のお話の続きを始めさせていただきたいと思います…。




私の体調に異変が起こり始めたのは、彼が我が家にやって来て、わずか3年後の事でした。


私の体調の変化は、まず初めに発熱となって現れ始めたのです。


毎日夜になると38℃を超える原因不明の熱にうなされ、眠れない日々に、だんだんと体力を奪われてゆきました。


最初は夜間の発熱だけでしたが、数週間経つ頃には、日中にも発熱が起こり、それと同時に全身の激しい関節痛も現れ始めたのです。


わずか数週間で体重も10㎏も落ちてしまい、起き上がることさえ出来ませんでした。


これは、ただ事じゃないと思った家族が救急車を要請し、私は市内の総合病院に搬送されたのです。


これは後になって、看護師さんから聞いた話なのですが、搬送時に血液検査をした結果、白血球の数値が40000オーバー、CRP(炎症数値)が約40ほど(正常値0.03以下)あったらしく、主治医は家族に、私と会わせたい人を呼ぶように宣告していたとの事でした。


ですが、その日から処方された内服薬(ステロイド系)の薬がよく効き、一週間ほどで一般病棟に移ることができたのです。


身体の痛みや発熱から解放された私がまず思ったのは、彼…クロちゃんのことでした。


やはり…というべきか、彼は家庭内の異変を察知し、元気がないということでした。


私の快復と共に、彼も元気になってくれるであろう…という期待とは裏腹に、彼の状態は悪化の一途を辿りました。


もしや…と思い、家族が動物病院へ連れて行った時には、すでに手遅れ状態だったとのことでした。


腎臓に大きな腫瘍があり、手が着けられない状態だったそうです。


安楽死の選択もあったようですが、家族は最期まで看病をすると決め、私の居ない自宅に連れて帰ってきました。


私の驚異の快復に反比例するかのように、彼の状態はますます悪化してゆき、私が外出許可を取って自宅に帰って来た時は、もうすでに自分の足では歩けない状態でした。


数々の武勇伝を残し、伝説の…とまで謳われた彼の姿は、もうそこにはありませんでした。


私の姿を見つけ、ありったけの力で鳴いてくれた姿は、今も脳裏に焼き付いています。


その後、病院に戻り数日後のことでした。


その日は日曜日だったこともあり、回診や検査もなく、私はベッドの上でぼんやり窓の外を眺めていました。


その時でした…。


遠くの方で光る物体が現れたのです。


最初は、飛行機が光の反射で光っているのだと思いながら眺めていたのですが、だんだん私の方に向かって進んできたのです。


気がつけば、その光の玉は窓ガラスを通り抜け、私のベッドの周りをグルグルと廻っています。


蛍くらいの大きさの光でしたが、その光は真っ白な眩いばかりの輝きを放っていました



あまりの美しさと、不思議さに放心状態だった私も、ようやく冷静にその光を見つめることができ始めました。


私はその瞬間「クロちゃんだ…」と直感で悟ったのです。


しばらく私の周りを飛び続けた光の玉は、もと来た道を戻るかのように、再びガラス窓を通り抜け、空の彼方に消えてゆきました。


さっき起こったばかりの現象を反芻しながら、自分なりに覚悟を決めた瞬間、私の携帯に自宅から着信がありました



やはり、彼の死の知らせでした。


家族が見守る中、一度息を引き取ったそうですが、再び息を吹き返し、家族の一人一人の顔を見つめながら静かに息を引き取ったそうです…。


たぶん、一度目に息を引き取った時に、私に会いに来てくれたんだと思います。


そして再び自宅に帰り、家族が見守る中、安らかに旅立ったのだと思います。


電話口で泣きながら母は、
「クロちゃんは、きっとあなたの身代わりになってくれたのよ」
と言い、私が先ほど起こった不思議な出来事を話すと
「クロちゃんにとって貴方は命の恩人…。きっと彼の恩返しね…。」
と言われてしまい、涙が止まりませんでした。


じつは彼、クロちゃんは、保健所に連れて行かれる寸前で、我が家に譲られた捨て猫だったのです。


とは言え、自分の命と引き換えに、私の命を救ってくれた彼…。


クロちゃん…


あなたは、魂だけの存在になってまで、私の入院する病院にまで会いに来てくれましたね…。


少しの時間だけしか、過ごすことが出来ませんでしたが、あなたと過ごした日々は永遠に忘れることはできません。


最後に脳裏に浮かんだあなたの姿は、まるで「招き猫」のように手を振るあなたの姿でした。


ありがとう、クロちゃん…


何度も、何度も手を振ってくれてありがとう…。










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